日々の泡

2013年09月22日(日) ヨハン・テオリン著「赤く微笑む春」読み始め

「冬の灯台が語るとき」の「黄昏に眠る秋」の続編、図書館で予約しておいたもの。最近、筋を追わずにじっくり読むことができる。ただし、あいかわらず読んだ端から忘れていくのだが。北欧、アイルランド物はちょっととっつきにくいが、だんだん身近なものになってきた。まず、冒頭から引き込まれた。3月のエーランド島北部。マルネス高齢者ホームでは、入居者芽見守るなか、遺体が運び出されて行った。元船長のイェロフは、ずっと考えていたことを実行に移すべく事務所に行く。ここにいたら次に運び出されるのは自分だという。だから自分のコテージに帰ると言う。娘のユリアも反対するが、生きてホームを出たい、村で死にたいという彼の決意は固かった。すごいと思った。そうだ、いくつになっても自分の生き方は自分で決めていいのだ。勇気さえあれば、人間は自分の生きたいように生きられるのだと思った。還暦を前にこんなことがひどく魅力的に思えた。何人もの、いや何組もの家族が登場する。色々な問題、悩みを抱えた人々。妻と別れ双子を育てているペール。定職はない。娘は重い病気にかかり入院している。別れた妻とその夫が看病をしているが、ペールは娘と対峙する勇気がない。気が弱いのだ。かれにもひどく共感を覚える。ミステリーだからもちろん事件が起こる。実はペールの父親のジェリーはいわゆるアダルト映画を製作して一財産を築いたが、最近は病気がちだった。ペールは父親をスタジオまで迎えに行って、燃え盛るビルから父親を救い出すが、男女が死に、父親に嫌疑がかかった。ペールは真犯人を見つけようとするが、父親も車でひき逃げされ死んでしまう。映画製作に関わった人々を訪ね歩いてる内にいろいろなことがわかってくる。エイズに犯されてしまった女性。名前を貸したために殺されてしまった男。結局ペールの異母弟が全財産を手にいれようとしての犯罪だった。最後の場面がすごい。この異母弟がペールを車で引き殺そうとする。ここでイェロフが動かない体を必死で引きずってペール救出に向かう。あわやというところで彼がフロントガラスを狙って投げつけた杖が運転手の注意をそらせ車は崖にぶつかって大破する。これと平行して他にもいくつかの物語が進行する。ヴェンデラとマックスという夫婦は、威嚇的なマックスのせいであまりうまくいっていない。ヴェンデラはたまに安定剤に頼る。彼女には不幸な少女時代があった。家の近くにあったエルフの岩。少女時代、彼女は母親の宝石を一つずつこの岩に置いて願い事をした。彼女は3匹の牛の世話をしなければならなかった。父親がつれてきた二階に住んでいる謎の人物に食事をつくって持っていかなければならなかった。遠足に行きたくて、願い事をすると、牛小屋が燃え、牛は死に彼女は遠足に行くことができた。謎の人物は彼女の兄だった。イェロフは一人で妻の残した日記を読みながら夜を過ごした。日記には不思議なことが綴られていた。妻が家に一人でいると、取り替えっ子がよく訪ねてきた。彼は彼女に宝石をくれた。あるとき、彼女は彼を追っていって、彼が石切場で岩に埋もれて殺されてしまう現場を目撃する。彼女は殺した男を知っていた。障害を持つ息子のことも。彼女は罪の意識に悩まされながらも決して他言しなかった。さて、ペールの娘は手術も成功し、夫と別れたヴェンデラとの明るい未来もほのみえるラストシーンだった。

イェロフの存在がこのシリーズの要となっていることは確かだ。


 < 過去  INDEX  未来 >


para