| 2013年04月13日(土) |
中町信著「模倣の殺意」読了 |
4/9に啓文堂にて購入。母に頼まれたNHKテキストの今日の料理を買いに行ったついでに。平積みになっていたので新刊かと思ったら、たまたま次の日に会社のTさんと廊下で立ち話をしていて、かなり昔刊行されたものの改訂版であることを知る。面白かったですか?と尋ねたら、まあ、読んでみてくださいと、微妙な表情だった。 で、あと数ページと言うところで昨夜は眠ってしまったので(このあたりからも、いかに盛り上がりに欠けているかがわかるが)朝、床の中で読み終える。なんというか、やはりポイントとなった2点は早々にわかった。ミステリーの大御所と新人賞をとったばかりで、その後の作が採用されない駆け出しの新人小説家が同じ小説がそれぞれ雑誌に掲載される。当然新人が盗作したと思われるが...しかも新人小説家は自らの小説「7月7日夜7時の死」という題名の通り、自殺をしてのける。それぞれのつながりから、事件の真相に迫ろうとする男と女。 まずこれが逆盗作であろうという事はぴんときた。さらにこれは被害者が2人いるのではないかということは、同じ坂井正夫に対して、描写が異なること。バリバリの女性記者で、ミステリーの大御所の娘である中田秋子が惹かれたというには、あまりに貧相な人間像しか浮かび上がらない一方で語られる坂井正夫。これは二人いるに違いないと直感的に思った。というか、ミステリーの王道のトリックがあるらしいということがかなりのヒントになったが。これは解説に気づく人は気づく伏線らしく、少々得意であった私はがっかりした。結局は、駆け出しの新人であった坂井正夫という人物が二人いて、一人は中田秋子とつきあっていた人物でこちらは新人賞をとっていない。この人物の作品を大御所が盗作したのだが、人妻が生んだ坂井の子が生まれつき脳性まひだったために、その妻が夫に内緒で坂井の手引きで脳性まひの専門施設に誘拐と偽って預ける。結局手術は成功したのだが、一生障害者として生きなければならないわが子を悲観して坂井はそっと濡れたガーゼをわが子の口にあて死に至らせる。自責の念から坂井は7月7日に自殺をする。 坂井は四万十川の旅館で、自分の自信作を執筆していたのだが、子供の手術が早まったためあわてて帰京し、その際に自分の創作ノートを旅館に置いてきてしまった。たまたまミステリー雑誌で坂井(違う坂井である)の名を知っていた番頭が、その坂井にノートを送る。当時新人賞を取りながらも、次の作を次々に没にされていた坂井は、そのノートに書かれている小説を自らの作品として編集者に送り、それは採用されることになる。坂井はその後、既に大御所が他の雑誌にその作品を掲載していることに気づき、同時に大御所が盗作したことを知る。結末は、そのことをネタにいずれ脅かされることを予測した中田秋子が父の名誉のためその坂井を自殺にみせかけて殺害したのだった。2つの事件の間にちょうど一年という期間があったこと などなど面白い趣向ではあるが、なんといっても坂井正夫と言う同姓同名の新進作家が存在するはずがないということが、この作品の致命的な欠陥であろうと思われる。中町新は2009年没とのこと。
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