日々の泡

2012年07月06日(金) 李承雨著「植物たちの私生活」読了

韓国に行く前の週にバタバタと短時間で図書館に行って、新刊書のコーナーで題名だけで(表紙が緑色だったこともあり)てっきり植物の話だと勘違いして借りた一冊。7/4(水)朝に通勤で読もうと持ってきてバスで開いてびっくり。普通の小説だった。普通というのはちょっと違うかもしれない。おまけに初の韓国人の著者によるものだった。冒頭は一人の男が蓮の花市場で女を買う場面から始まる。ここですでに読むのを放棄しようかと思ったが、とりあえず読み進めることとする。話は思わぬ方向に進む。女を部屋に連れ込んだと思うや否や女が部屋を飛び出してくる。読者は一体何事かと、ついつい物語に引き込まれるわけだ。男の家族は部屋にこもったまま口もほとんど聞かない父親と高級レストランを経営する母、そして、兵役中に爆発事故で両足を失った兄との4人家族だった。優秀な兄を誇りとしていた両親、男は子供のころから疎外した存在として家出を繰り返す。兄にはスンミという恋人がいたが、男は既に二人がつきあっていないことを知る。兄は、両足を失い、ときどき性的な発作を起こすため、母親が兄をおぶって蓮の花市場に通っていたため、男がその役割を替わったのだった。崩壊寸前の家族。男は、そのきっかけを作ったのが自分であることを知る。スンミに横恋慕をした男は、兄が大事にしているカメラを持ち出し、家出の資金の足しにしようと質屋にいれるが、その際に兄が政治的活動をしている証拠となる写真がはいったフィルムごと渡してしまったのだ。兄は連行され、兵役に送られ、そして足を失ったのだ。男は兄を森に散歩に連れ出し、2本の木を示される。松の木にからみついているトネリコの木。男はそこに兄の心情を思う。カメラへの情熱を思い出させようと考える。男はスンミを訪ねていく。スンミは兄の事故を知らず、男の母やスンミを自分のものにしようとした義兄により、兄とスンミを嘘により引き離した。スンミは兄が自分を否定したのだと思い自暴自棄な生活を送っていた。やがて、物語は一家の根源的な秘密に近づいていく。母親は、まだ高級レストランの従業員であったときに、一人の高官と知り合う。彼には妻がいたが二人はやがて愛し合うようになり ある日彼女は南川につれていかれる。そこには南国の楽園があった。高官は政治犯として連れ去られ30年以上が過ぎる。ある日母のもとに高官からの使いが来る。母を追っていく男と兄。二人はそこで楽園で愛し合う二人の姿を目撃する。そして父親からの告白。父親はかつて母親と同じレストランで働くコックだった。母親を愛していた彼は、高官との子供を宿した母親をその楽園で子供を産み落とすまで世話をし、料理を作った。兄はその高官との子供だったのだ。 男はスンミを兄に会わせようと画策する。 そして兄の失踪。エンドに向かっては感動的だ。父親が初めて家族のために食事を作る。おだやかなひととき。明日には男が兄を連れてスンミが待つ南川に行く予定だ。幸せな予兆で物語は終わる。「すべての木は挫折した愛の化身だ」兄は人間や神話の神々が木に返信する話を集めていた。


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