苦しい。
久しぶりの楽しい長電話は、 あたしが最も嫌いな待つ女にあたしを変えた。
どうしてあんなに簡単にすべてを話せたんだろう。 その人は「保健室」みたいだと言われるという。 きっと、その人が先に話したからだ。 脛に傷持つ者同士。 あたしは何事も無かったように「あたしは汚いから」って言った。
多数派に憧れる少数派で、 映画の話も本の話もぜんぜんできなかった。 でも、その人はあたし以上にあたしの好きなものが好きな人だった。 「好き」のポイントがいっぱいいっぱい重なって、 楽しくて、わくわくして。 もっともっと話がしたい。 もっともっと近づきたい。
悔しいぐらいに似ている。 仕事に対する姿勢とか、男と女の考え方とか。 きっと、あたしの考えが男性的なのだろう。 でも、絶対的に分かち合えない部分がある。
その人はB型。
決定的な事実。
それでも。 電話で聞く声は、あの人と話しているような錯覚に陥った。
お互いに想像するところは同じで、 きっと遠くない未来に彼と寝ると思う。 寝ないかもしれないけれど、寝るかもしれない。
映画とか写真とかアートとか。 あたしが好きだと思ってるものを上手く具現化できる人はすごいと思う。
男と女のことをあんなにも簡単に話せる人は珍しいけれど、 不快ではない話し方をする人だった。
あたしはやっぱり眠くなると甘えたくなるんだ。 電話の向こうで、今までの人と同じような反応をしてくれた。 それは興醒めだったけど、久しぶりに可笑しかった。
次会うときはどんな顔すれば良いのかわからないけれど、 きっと近いうちに会うから。
携帯のアドレスを聞いてなかったけれど、 別に不都合は無かった。 でも、教えてくれたから。 これで、いつでも話せる。
当面は幻滅されないように仕事の顔をキープしなきゃ。 でも、きっと二人でジョゼ見てジンを飲んだらそういうことになると思う。
笑いあいながら、お互いにちょっとずつ裏切りと共犯の気持ちになるんだと思う。
そんな時だってきっとその人はあたしのことを苗字で呼ぶんだろうね。
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