佐山葉月の日記
うかうか一年。地味でぽやんとした趣味の毎日。

2003年07月15日(火) 新作というほどでもないですが

日曜に書き上げていた100のお題をひとつ。
昨日はいつものよーに大残業だったけど、今日は風邪気味でしんどかったし
プチ残業で帰ったし。


ああでも本屋に寄ったら、Spoonが超可愛くて買っちゃいました。
「特集・夢見る文房具」。タイトルだけで心踊るではないですか。
見開きでジャポニカ学習帳がだーっと並んでるページとかあって、
思わずプラの前ツアーのパンフ思い出したりもしたんですが、
サクラクレパスとかクーピーペンシルとかぺんてるとか、
ノスタルジーを誘いつつ今見るとキュートなデザインじゃないか!と
思ったりして。小学生当時はそんなこと思いもしなかったんだけど。

そして六本木ヒルズ特集もあったんですが、ちらっと見た流行通信も特集してて
旬だしなあ、と思ったんですが、両誌とも独自の撮り方をしてて可愛かった。
Spoonは高橋マリ子ちゃんが色んな部屋でファッションぽく撮ってて、
流行通信は村上隆のあのキテレツなぬいぐるみがやっぱり色んな部屋にいて、
どっちも“空間を見せる”演出で、おしゃれでした。
情報の要素は情報誌に任せればいいから、こういう贅沢な撮り方できるところは
ばんばんして欲しい。お高いんだもの、ロケーションもいいはずだ。
しかしSpoonで知ったんですが、会員制の空中図書館があるなんて!
写真を見る限り、かーなーり素敵(ええ、図書館&本屋フェチです)
しかし会費が月6000円プラス入会金一万円…エクスペンシヴ…



ということで(どういうことだ)、100のお題です↓
ちなみにタケ潤。敢えて。自分に対する実験。

参考:http://plaza22.mbn.or.jp/~SignF/
-----------------------------------------------------
096:溺れる魚

 ドアが開いた向こうに立っていたタケオは、見慣れた笑顔で、よう、と片手を上げた。うん、と答えた自分もいつも通りだったはずだ。
 だけど部屋に上がってソファに寛いだ、と思った途端、飲み物を運んで来たタケオが覗き込んで来た。幾分、心配そうに。
「…潤、疲れてる?無理させた?」
 え、と一瞬目を見開いた潤は、表情を崩して首を振った。抱えていた感情の小さなざわめきが、彼には伝わってしまったのだろうけど、無理をして来たわけでは決してない。
「や、平気。無理なんてするわけないじゃん」
 タケオくん家来んのに。取り繕うわけでなく自然に付け加えられた言葉に、タケオも他意無く笑った――いっそ無邪気に、良かった、という顔で。
 そして伸ばされた腕に、頬を包む手のひらに目を閉じて、潤はそっと息を吐く。



「…潤、ほんとに、疲れてるならいいから」
 ベッドに座って煙草を吸っていた彼は、ただ眠るつもりだったのだろう。甘えるように腕を絡ませて、引き寄せた向こうでやや、戸惑い気味の声がした。
 見上げたタケオは少し目を伏せた、気遣いを含んだやはり優しい表情で、包み込むようなそれに抱かれている自分を感じながら、だけどちいさく、胸が痛んだ。
「疲れてない。……駄目?」
「駄目じゃ無いけど、でも潤が、何か」
「疲れてるように見える?」
「うーん…何か元気ないかなって…、――でも」
 タケオの手が髪に触れて絡む。優しく髪を梳く感覚に目を閉じると、そっと瞼に唇が触れた。
「甘えたいみたいだし?」
「…うん。元気ないって見えるんなら、甘えさせてよ」
「じゃあ。嬉しいけどね、俺は」
 いつでもそうして欲しいくらいだよ。
 囁かれた言葉に、また、ちいさな痛みが走った。



 もし、不安だよ、と言ったら、彼はきっと心底驚くのだろう。
 これ以上ないというくらい、甘やかされている自覚はあった。彼はいつも自分を見て、気遣い、優しくする。何のてらいもなく注がれるそれは愛情と呼ぶしかないもので、愛されているという自覚も、ある。
 ……だけど、不安だよ、と言ったら。



 先に目を覚ました潤は、隣で眠るタケオをそっと覗き込む。
 寝起きの悪い彼は自分より先に起きることなんて有り得なくて、いつも目覚めてしばらくはタケオの寝顔を見るのが習慣になってしまった。深く眠る、彼を。
 手を伸ばして、髪に触れてみた。そのまま腕を下ろし、そっとその身体を抱き締める。彼の身体は温かくて、少しだけ泣きそうになった。
 不安だよ、タケオくん。
 彼は死んだように眠るから、本当に死んでいるのではないかと思って、このまま目覚めないのではないかと思って、いつも不安になる。彼が起きなかったらどうすればいいのか、全く見当がつかなくてほとんど絶望する。
 どうしようもない、と自嘲しながらも、止める術を知らなくて、いつの間にか不安は増え続けていて、ことあるごとに胸をさざめかせる。それは、タケオに優しくされるほど強くなって。
 優しすぎる彼の言葉に、行動に、――だけど不安を覚えるなんて彼は、思いもしないんだろうけれど。



「…潤?」
 声をかけられてはっとした。タケオを抱いたまま、うとうととしていたらしい。
「どうした?恐い夢でも見た?」
 腕の中でもぞもぞと動くタケオの声は案外はっきりしていて、しばらく前から目覚めていたのだろうと思った。潤に抱き締められてる、という状態をゆっくり味わっていたのかもしれない。
「…起きたの?」
「ん、ちょっと前。…潤の腕が気持ち良かったから、ちょっと甘えてた」
 言うと同時に、ぐいと身体を引き寄せられた。逆に腕の中に包まれる。
「でもやっぱりこっちの方がいい」
「何言ってんの」
「嬉しかったけどね。寝てる時に抱き締めてくれて」
「…ん?」
 意味が掴めず見上げると、タケオはやっぱり優しい目で、そして嬉しそうに微笑んだ。
「いっつも先に起きてるからさ、寂しいわけよ。隣にいないから」
 姿が見えないと不安じゃない?
 潤は目を見開き、一瞬息を吸ってタケオにしがみついた。胸に顔を埋めるようにする潤に、タケオが怪訝そうに声をかける。
「…潤?」
 潤は答えず、ただタケオにしがみついていた。微かに震える肩に気付いて、それを抱いたままタケオも何も言わなかった。ただ潤を抱き締めた。
 長い沈黙の後、ゆっくり顔を上げた潤は、起き上がって泣き笑いのような顔で項垂れた。やがて小さな声がする。
「ねえ、俺は不安だよ。見えてても、不安だよ、いっつも」
 タケオの表情を見ずに、言った。





 昨日は家の前で、このドアが開かなかったらどうしようと不安になった。ドアが開く直前まで、きっと自分は迷子の子供のような顔をしていたんだろう。
 甘やかされるまま、それでも確かに、彼の腕の中でちゃんと泳いでいたはずなのに。もう、泳ぎ方を忘れてしまった。いつの間にか溺れてしまっていた。






 不意に腕を引かれて、再びベッドに倒れ込んだ。見下ろすタケオはどこか複雑な笑みを浮かべている。
 その顔が近付き、そっと触れるだけのキスが降りて来た。
「ごめん、俺にはこれが精一杯だ」
「タケオ、くん」
「……伝わらないかな。でも、俺は」
 続く言葉は、引き寄せた潤の唇に吸い込まれた。解ってる、いいんだよタケオくん、そう言いながら口づけを求めた潤が、それ以上何も言わせなかった。
 とっくに溺れてしまった自分はもう、取り返しつかないのだから。優しい口づけに自ら溺れながら、沈んで行く自分を思い浮かべてまたそっと、息を、吐いた。


-----------------------------------------------------
…書いてて、どーもタケ潤は「べたべたに甘やかすタケオさん」が自分の基本になりそうな予感が。


 < 戻  INDEX  次 >


佐山葉月 [MAIL]