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2002年11月28日(木) 邦楽の強度

昨晩、寝る前に小説を読みながらですね、ビートルズを聴いたわけです。それも赤盤の2枚目がどうしても聴きたくなって、それを。

それで、その後、どうしてもミスターチルドレンを聴きたくなった。最新作の『It's A Wonderful World』が目に付いたので、聴いた。

日本のビートルズです。補足すれば革新性という点よりも、名曲を次々繰り出してポップを開拓していく者としての側面だね。最新作も超越的なクオリティ。歌詞の深さと、曲の構成、コード感、めくるめくアレンジ、すごすぎる。特に思ったのは、歌詞が本当に素晴らしい。日本人に寄り添っているな。質が前に進んでいる。

数年前からのサザン"TSUNAMI"や福山"桜坂"を着火点として、平井堅やゴスペラーズといった本義的な歌い手、あるいは曲として本当にしっかりしていた過去の曲を歌うカヴァーブーム(林檎とか良かった)、沖縄(元ちとせ、感動)などといった、メロディーと歌うことに焦点をあてた音楽が日本のシーンの一つの流れになっている。

そんなヒップホップとかガールズポップとかに並ぶ「歌もの」の潮流の中で、ミスターチルドレンやスピッツは最近すごく良い新作を出したよね。クオリティがものすごく高くて、孤高の存在になりつつある。

それはミスターチルドレンが「ミスチル」をやったから、スピッツが「スピッツ」をやったから当たり前の結果なんだ。自分たちの自分たちしかできない歌をやった。そして、まだこの二大バンドを超えるバンドは日本には存在していない。極論すれば。

『JAPAN』の鹿野さんに話してもらったけれど、すごく邦楽誌というのが作りにくくなってる状況。例えば、くるりの岸田さんの言う、空っぽなクソ、クソ、クソなJ-POPなら掃いて捨てるほどあるけど、あとはもう決まったメンツしか残っていない。ここ何年間か顔ぶれが同じ。ようするに若手が全然育ってない。変わらない。進まない。

インディーズ畑でちまちまとやってるバンドや、諦めてしまっているアーティストはたくさんいるけれど、チャートを真っ向から引き受けて、シーンを引っくり返すような「モーニング・グローリー」やディス・イズ・イット宣言が日本には無い。それじゃあ、盛りあがるわけない。

ミスチルやスピッツを聴いてきた世代がシーンにも登場してきて、インタビューなんかで素直に影響を受けたバンドとして以前のブルーハーツのようにこの2バンドを挙げるけれど、そいつらの新作は一向にフォロワーに過ぎない。劣る。ゴーイング・アンダーグラウンドだってそうだ。だからわくわくしない。単純に時間軸の問題があって、ミスチルやスピッツはキャリアが長いからさらに自分達の世界観を熟成できるというアドバンテージがあるけれど、超えるバンドは超えるはず。

だから、俺は洋楽ばっか聴いてしまうんだよね。洋楽の方がわくわくする。更新作業が今もなお行われている。塗りつぶして塗りつぶしてどんどん先に進んでいる。

日本は先に進んでいるか? 不況と一緒に自分たちの意志も縮小していってないか? 邦楽の音楽的強度をもっともっと強めていかなければならないと思う。


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