デイドリーム ビリーバー
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2003年01月04日(土) おもいださないで

大人になって、別々の道を歩き始めた友人達は、みんな
日々の生活や夢にせいいっぱいで
昔をなつかしがって会うなんて、今はまだできない。
年に一度の年賀状だけが、唯一目に見える、つながりのしるしだったりもする。

彼にもそういう友人は何人かいて、その一人から年賀状が届いたらしい。
「こどもがうまれました」と。

嬉しそうに、私に電話で報告。

「写真、めっちゃかわいいねん。めっちゃかわいいねん。」って
私と彼の子供だったら、多分私に似てお腹がまるいだろうとか(ムカッ)
そんなことばかり
でもなんだかすごく楽しそうなので、私も楽しくって、つい

「○○君って、確か前に、結婚式に出席した人だよねえ?」って
いらないことを、きいてしまった。


彼は
「んあっ!?うん、そうそう…」と微妙な返事。

あれ?去年の春に結婚した人じゃなかったっけ?
高校の同級生じゃなかったっけ?
式が神戸だったから
式の翌日、私が新幹線で大阪に行って、そのまま二人でUSJに行った

「神戸の…」と言いかけたら
「いや、あの、横浜の…」
彼の言葉が言いよどんだ。


横浜。結婚式。
頭の中、がちゃがちゃと嫌な音をたてて、パズルが組み合わさる。

一度だけ彼に見せてもらった、写真の中。
春。
ラズベリーピンクのワンピース。
ワインで赤くなった彼の顔。
彼と彼女のくもりのない笑顔。

前の彼女と、一緒に出席した結婚式。

二人の共通の友達じゃない。「彼の」友達の結婚式。
そこに二人で出席した、そういう結婚式。

「いつかきっとこの人と」と、きっと彼が思った日。




彼は、以前なら、こういうとき
「大丈夫やからな。俺が今好きなのは、宙ちゃんやからな」って
何度も何度も言った。

今はもうそんなことは言わない。
ただ「よしよし、よしよし」って。

「彼が今一番好きなのは私」
それは、私もよくわかっていて。
私がそれをわかっているっていうことも、彼はよく知っている。

考えてもしかたがないことを考えて、落ち込むのだということも
つきあって1年経った今、彼はよく知っている。
だから、ただ「よしよし、よしよし」。

そんな彼をやさしいと思う。愛されていると思う。
私は多分、とんでもなく欲張りなのだ。


だって例えば、いくら彼が今一番私を好きでも。

彼女といた8年の間で、彼女を愛しいと思ったその量と
この1年で、私を思った量とでは。
彼女を一番愛しいと感じた、その時の思いの深さと
私を愛しいと感じた、その時の思いの深さとでは。
どちらが。

そんなことを、繰り返し繰り返し。




お願い。
思い出さないで。
彼女のこと、一瞬も思い出さないで。
私のことだけ考えて。私のことだけ好きでいて。


…なんて、嘘。
そんな、醒めたら消える夢のような
にせものみたいな、あやふやな気持ちじゃなくて。
彼女のこと思い出しても、たとえ偶然再会しても
決して揺らぐことのないような、ほんものの気持ちで、クリアな頭で
それでも私を好きでいて。




…だけどやっぱり。

やっぱり、思い出さないで。
あなたが夢を見ているのなら、醒めなくていい。
思い出もすべて消してしまって。
熱にうかされたような、恋のままでいいから
真実の愛になんてならなくてもいいから
ずっと私のそばにいて。

私だけを、好きでいて。


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