初日 最新 目次 MAIL HOME


ささやかでもない1日
Johgen
MAIL
HOME

     2008年08月15日(金)
DVD パンズ・ラビリンス


まず、主人公の母親が陰気極まりない。
戦時下ならば、世間的にはちょいとエリートな大尉と再婚する母親。
主人公オフェリアと一緒に、大尉の下へお嫁入りする。
仕立て屋の主人を戦争で無くした未亡人が、
この大尉とどういういきさつで知り合ったかは判らないが、
知らない土地へ来ても、子どもと二人楽な生活が待っているはず…
という打算も働いての結婚なんだろう。

しかし、冷酷で偉そうな大尉をオフェリアはきらっている。
新しいお父さんだとは認めたくない。

オフェリア「なぜ結婚したの?」
母親「1人がイヤだったのよ」
オ「私がいるから1人じゃないのに」
母「おまえも大人になったらわかるわよ」

そんな母親は、嫁入りする時点で既に臨月になろうとするお腹を抱えている。
「1人がイヤ」「大人になったらわかる」
なんだかその言葉の意味がなんとも淫靡に聞こえてしまう。
…いややん こんな母ちゃん。

陰気な母親と横暴な義父から逃げるべく、妄想街道まっしぐらに 
オフェリアはファンタジアの世界に迷い込んでいく。

勝手な思い込みだが、パン=牧神(牧羊神)というのは美少年ではないのか。
多分幼稚園か小学校低学年のころ、絵本か子供向けの漫画に出てきた牧神=美少年が、
長年わたしのイメージとしてインプットされているからなんだけど。
ところが、このフィルムに出てくる牧神といったら、
アーノルドシュワルツェネッガーに映画の中で「お前は醜い」と言われた<プレデター>みたいな奴。

うっわ また出た、気持ちわるっ…というシロモノ。
怪しさ満タン。
オフェリアを魔法の王国の王女に戻すため、あらゆるアドバイスと試練を与えるコイツの言う事、
本当に信用できるんだろうか?と思わずにいられない。
違う意味でドキドキさせられる。


極悪非道の義父が見せる残酷極まりない暴力。
中途半端な魔法のせいか、流産しかける母親はいきなり下半身血まみれ
ラストでオフェリアを待ち受ける黄金の国は一瞬。

現世が苦しければ、極楽浄土にいらっしゃいという
厭世念仏思想にも似た結末。

ファンタジーを舐めてはいけなかった。
間違っても子どもと一緒に見る 夢のメルヘンではない。