読了日記

2008年10月30日(木) 「無冠の王妃マントノン夫人 上下」






「無冠の王妃マントノン夫人 上下」(フランソアーズ・シャンデルナゴール著,中央公論新社)


内容:受刑者の子として監獄で生まれ、やがてはルイ14世の妃となったフランソワーズ・ドビニエ(マントノン)の一人称で語られる、史実を基にしたなりきり自伝小説。


N尾より借り物。

N尾がどういうつもりでこの本を買ったのか知りませんが(ヨーロッパ王室系ものが好きっぽうのでそれか?)私に貸したのは多分「太陽王」繋がり。というかそれがあったから「貸そか?」に答えたわけで。じゃなきゃ借りなかったわけで。
フランスミュージカル「le roi soliel」のヒロインがこの人なんですわ。んで、私は太陽王時代のフランスは教科書とかベルばらで見た以上には知らなかったので、背景を知る上では良いかなと思って。

マントノン夫人の自伝として非常に良く出来た小説でした。
他人が誰かの自伝を模して小説を書こうとすると、つい神の視点を交えた客観部分が見えてしまうのですが、これは、死を目前にして人生を振り返る、過去が如何なるものであったか知っているという意味での、過去に対するある種の神の視点を持ちつつも、マントノン夫人の視点を全く逸脱せず話が進んでいる。描かれた出来事も感情も全てマントノン夫人を通して語られている。
そしてキャラ付けが絶妙。完全にマントノン夫人になりきって描いている。自伝らしからぬところが何処にもない。彼女の、虚栄心や信念から、文章が整いすぎているという面も含めて。
あちこちに見える選民思想、優越心は、80年を生き自身を築き上げこの道に他なしを確固とした意思としてでなく身に染み付いた汚れのように自然に臭いを発している。相容れなくても彼女はそう生きたのだと思わせる、強い説得力があった。

ミュージカルと照らし合わせられる部分は多くはありませんでしたが、「あ、あれがスカロン殿か」「モンテスパン夫人はああなったのか」「王子は結構長生きしたんじゃん」と背景を知るのは楽しかったです。
あのミュージカル、結構「史実」と違ってますけど、OKなのか。

ま、でもフツー、人には勧めないなぁ。正確にはピンポイントに人に勧める。
つまり、「ルイ14世時代のフランスの歴史もしくはその時代にマントノン夫人に関わった人々に興味があるなら読んでみそ」。同時代でも彼女に関わってない人は描かれてません。自伝だし。そして「政治的影響力が多少はあった一人の宮廷夫人の目を通して」以上の歴史はあんま語られてません。


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