読了日記

2008年06月04日(水) 「架空の王国」

「架空の王国」(高野史緒著,中央公論社)



内容:ヨーロッパの小国ボーヴァルの大学に西洋史を学ぶべく特別入学枠で受験に訪れた瑠花は、担当教官の変死に遭遇する。次期王太子を律する聖別式を前に、国の存亡を賭けた暗躍と謎が立ちはだかる。小説。


人に薦められて古本で購入。

んーーーーーと、えーーーーーと、むーーーーーー、…惜しい!

・作者の知識と取材と想像力を駆使し、在り得る歴史を創造
・王家,大学図書館という琴線に触れるシチュエーション
・恋愛要素有

私的ストライクな題材でシチュエーションで展開なんですが。
ついでに私は意中のカップリングが成立すると他は多少の事は目を瞑る…例えどれだけ他が完璧でも思うカップリングが成立しないと物足りなく思う性質があり、この話ではしっかり成立したのですが。

何つーか、微妙に惜しい。
いや、面白い面白くないの二極で分けろというなら面白いと思いますし、良く出来ているとは思います。伏線の張り方と回収とか、とても綺麗。
自分の専門分野を活かし創作にあたる(多少の知識のひけらかし…教授をもし)というのは結構好きだし田中某みたく、「そら小説じゃのーて論文じゃ!」という、創作性の低いものでなく、えー、上手いなぁとは思ったのですが。
瑠花のふてぶてしい態度とかツボなんですが。

瑠花の描写がどうもいびつなんですよ。
頭痛持ちなんて、全然ストーリィに活きていないのに頻繁に出てくる。そりゃ、設定を全て活かす必要はないでしょうが、浮いているんですよ。
聖別阻止は結局恋心が理由なんですよね?でもそこまで至る心情が描かれていない。
いや、主人公と言え全ての心情を詳らかにする必要はないと思うんですけど、視点が主人公である以上、しかも三人称なんだから(一人称だと認めていない感情は描けないけど)、展開に絡む心情はもう少し掘り下げて欲しい。
と、描かなくて良いところを描いていて、描くべきところを描いていない気がする。
これは、わざと、とか、妙技とか言うより、作者の瑠花に対する半端な投影が原因の気がする。
自分=瑠花だから、頭痛とかストーリィに絡まない設定や性質が描写される。描き方が不十分なのは自分としては消化しているつもりで読者には不精して伝えてない部分があるからかと。
でも、自分≠瑠花で、創作性を重視し不必要なまでの自己投影を避ける為不自然に突き放し、そこがまた瑠花の薄さに繋がったのではないか、という感じを受けた。
本当のところがどうかなんて知りませんけどね。

本当に、私が好きな材料が揃っているだけに惜しい。
編み上がったタペストリーの糸が所々はみ出しているような印象の話だった。ほつれてなければ絵は素晴らしいのに…という感じ。

佐藤亜紀好きの友人に勧めようかと思ったけど、乱読モードの時ならともかく、他にハマるものがある時に「取り合えず読んで」とは言えない本。


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