読了日記

2006年05月07日(日) 「冬の旅人上,下」


「冬の旅人上,下」
(皆川博子著,講談社)



内容:時は19世紀末。子供の頃一枚の西洋画に魅せられた川江環は、聖像画を学ぶ為、17歳で帝政ロシアに渡る。幾つかの行き違いから留学先の修道院を追い出され、日本に強制送還される直前に逃亡し、貧民街に身を寄せつつ、衝動に突き動かされるままに絵筆を取る。やがて、ロシアは革命への道を歩み、環ことタマーラも否応無しにその渦に巻き込まれて行く。小説。


Iサンより借り物。

物語は環の17歳から始まり50代まで、一人称で語られる。
望まぬ出産,異郷での生活,無実の罪により流罪となった友人(?)に付き添ってのシベリアでの生活。
美しい少年に美しい少女との出会い。
ラスプーチン,皇帝一家との交流等々。

激動の人生に関わる人夫々の描写がとても中途半端だ。
不満…もあるけど、それ以上に、人の人生とはそんなもんなんだろうなと思ってみたりして。
一人の人間にとって、時と共に流れていく他人は多い。どんなに鮮明で美しい思い出でも、その人にとっては過去のもので再びの邂逅はそうあるものではない。
そして激動の人生だからこそ、流れる過去を頻繁に振り返っている暇なぞない。本人は。

でもこっちは読者なんだし、小説なんだし、あそことかこことか拾って欲しかったな、あの子はどうなったのかな、何処へ行ったんだろう、と、書いて欲しい所はいっぱいありました。
個人的な好みで言えば、そんな話では作品の完成度は落ちただろうけど、フュージャとの軟禁生活…環が想う「選択しなかったもう1つの未来」の方が見てみたかったです。

子供はどうなったのだろう。花乃は?リョーリャは?
環の人生にはもう交わらなかった。だから、書かれないのが正しいのだけど、知りたかったです。

後半は凄くもったりして感じました。
多分、私が皇帝一家に関する文献とか一時期集めていたからだと思う。皇帝一家の軟禁生活や、アレの病気の事や、知らなかった人には新鮮だったかもしれませんが、あの最期の日々のレポートを、私はかつて貪るように読んだ事があります。だもんで、「そこは知っているからもっと違う所を!」とイライラしたわけです。

…まあ、なんだ、「傑作だ」と言う人には文句をつけるつもりはありませんが、もちっとエンタメ度が高い方が私は好み。

ところで環って、ショタコン?と思ってしまったのは私だけではあるまい。


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