バニラへの日々
僕の向かいに座っている40代前半の女性は明らかにいつもとようすが違っていた.今日はアルバイトの日で,彼女は僕のバイト先の上司にあたる人だ.明るく気さくな人で通りがかる人から話しかけられることが多いのだが,今日は何かプレゼントのようなものも受け取っている.生まれた年の話もしているようだ.ピンときたね.はっきりとした会話の内容は聞き取れないのだけど,今日は彼女の誕生日であることは間違いなさそうだ.
彼女にはふだんからお世話になっているし,ここは素知らぬ顔をしてプレゼントを渡しびっくりさせたいところ.昼休みに会社を飛び出し駅前で物色する.目に付いたのは洒落た感じの食器やうまそうな日本酒だ.だが趣味に合わない場合もあるしな〜などと思っていたら,あるアイデア商品が目に入った.納豆かき混ぜ棒だ.歯ブラシをちょっと太くしたようなサイズで,鬼が持っている棍棒のようなでこぼこした形をしている.箸で混ぜるのに比べて何倍も楽で,何倍もおいしくなるとの宣伝文句だ.商品全体から「私を試してみてください!」というオーラが放たれている.僕はこの誘惑に耐えきれず,レジに持っていってプレゼント用の包装をお願いしてしまった.このとき明らかに冷静さを失っていたように思う.
社に戻り「誕生日おめでとうございます」と彼女に声をかけるとびっくりした表情をしていたが,それは今日が彼女の誕生日ではないためで,僕の一方的な勘違いであった.続けてプレゼントを手渡すと非常に喜んでくれたが,包装を解くと微妙な表情となった.本番の誕生日にはもう少しプレゼントらしいものをお渡しすることにしよう.
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管理人: vanilla
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