台所のすみっちょ...風子

 

 

密室。 - 2006年03月28日(火)

バイト先での私の担当は洋服である。

私は「真心を込めた接客」をモットーとしている。

まず、たくさんのアイテムの中から、その客に一番ピッタリの

色とデザインを丁寧に選び、丁寧に試着室へと促す。

そして、頃合を見計らって、

「お客様いかがでしょ〜?」

などと声をかけ、自らも試着室に入りドアを閉める。

お客の平均年齢は60歳。

腹、二の腕、などなど・・体にイレギュラーに肉がついているため、

試着室の外に出て、その姿を人前にさらす、

ということがはばかられるのでは?と思うからだ。


私は鏡の前に立つお客を見てあげる。

フレンドリーな感覚も大切にしてる私は、

「お母さ〜ん、良いんじゃない?」といった親とその娘ふうな感じで、

試着室の床に腰をおろし、客の立ち姿を見上げながら、

誉めたりアドバイスしたりするのだ。

座るのは、決して「足を休めたい」とか「座りたい」からではない。

あくまでフレンドリーさを重視するからである。一応、断っておく。


さて、先日のこと。いつものように、そのような方法で、

密室状態の試着室で60代後半とおぼしきおばさんを接客していたら、

たぶん・・・

便秘気味がいけなかったのか・・

おならした。

生暖かいガスで、強烈に臭かった。

密室に充満するガス。

だが、客は何も言わない。鼻に私のそれは確実に届いているであろうに、

顔色一つ変えなかった。


「ありがとうございます」

店を出る彼女の後ろ姿に私は深々と頭を下げた。

それは、Tシャツを3枚も買ってくれたからではなく、

「あんた、おならしたでしょ!」と私を咎めないどころか、

何事もなかったかのように振舞ってくれたことへの

感謝の気持ちであったのは、言うまでもない。

おしまい。


...




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