台所のすみっちょ...風子

 

 

キャリア - 2003年10月21日(火)

バイトで受付に座っていると、時たま「ギャハギャハァ〜」

とか、「ウ〜ワ〜ハハハァ〜」ってなかんじの到底常人の

ものとは思えないような大きな笑い声が、

事務所の方から聞こえて来る時がある。

その声の主はTさん。

あられちゃんふうめがねをかけた可愛らしい女性である。


彼女の仕事は、照明担当。

私のバイト先を運営している会社、実は舞台建築とか舞台演出を

手がけている会社でもある。

だから、社員のほとんどが照明とか舞台設計とか音響などの

技術を持っている人ばかりで、そのキャリアはちょっとやそこらじゃ

習得できないものばかり。


彼女のすごいのは笑い声だけではない。

挨拶も大きな声でハキハキと〜!と西川きよしばりである。

彼女の元気で明るい挨拶は、バイト身分の私に対してもなんら変わることがない。

受付で鎮座している私の前を通るたび、

「お疲れさまで〜〜す!」と勢い良く声をかけてくれる。

こちらとしては、ぜんぜん疲れていないので、その度に

「すみません・・」と恐縮してばかり。

だが、私は知っている。明るいのは目を合わせた時だけだということを。

そう、彼女が大きな声で挨拶したりニコニコしたりするのは一瞬で、

それが終わり、視線を外した途端、顔が能面のようになっているということを。

その表情の変わりようは、急な変化に良く顔が破れないなぁ〜、

と心配してしまうほどで、あのニッコリとした顔の裏で、

いったい本当は私のことをどんなふうに

考えているのか?と不安になることがあったりする。

例えば「暇な蕎麦屋の招き猫みたい・・」とか思っているんではなかろうか?と。


で、そんな31歳の彼女がどうやら近々結婚するらしい。

私と仲の良い風船ソックリなSちゃんが教えてくれた。

相手は同じ会社の音響担当の人で、結婚と同時に会社を辞めるのだそうだ。

もったいないと思った。

なので、どうして辞めるのか?と聞いて見ると

「照明の仕事は夜遅いから両立できないと思ったんじゃないんですかぁ〜
 ご飯とかちゃんと作ってあげたいって言ってましたし」

とSちゃんはくったく無く笑うのだった。


う〜ん、、両立とは何か?

仕事を捨ててまでやり遂げなければならないものなのか?

家事は協力してもらえばいいじゃないか。

女性は年齢を経るとともに、どんどん社会的には立場が厳しくなる。

せっかく積んだキャリアを、しかも再就職が難しそうな照明という仕事を、

なんであっさりと捨てるのか?


そこで私はSちゃんに

「今からでも遅くない。辞めることをやめてくださいっていいなよ。
 料理なんてオリジン弁当があんじゃん」と提案してみた。

するとSちゃんは

「じゃあ、そう言ってあげてくださいよ〜私からそんなこと言えませんよ〜。
 大先輩ですからぁ〜、」と私に言うのであった。


が、私は言えない。いや、言うのが怖い。

だって今度こそ、あの満面の笑みに隠された心が見えそうで。

「余計なお世話よ。な〜に言ってんのこのおばさん」っていう本心が。


おしまい。


...




My追加

 

 

 

 

INDEX
past  will

Mail