デコラのひとりごと。
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後輩の調子が悪い。
夜桜の下で、じっくりと話をきいた。 最近は暖かい日々だけれど、日が暮れると肌寒い。 すっかり痩せてしまった冷たいその手を握り締めて 彼女の質問にひとつひとつ答えてゆく。 少し妄想めいたものが彼女の中で始まっていて。 「本当のことを教えてください」 彼女は訊く。すべては本当のことばかりなのに。
前のときは、壊すのが恐くて触れることもできずに。 想像ばかりが広がって、周りの言葉に惑わされて。 私自身も弱々しくなってしまっていた。 でも今は。強くありたいと思う。 頼ってほしいから。 今日のように、呼び出してくれてもいいから。 わからないより、わかるほうが全然いい。
私は、そんなに優しい人間ではないと思う。 誰のことも救えない、小さな人間だと思う。 それでも、彼女を放っておけないのは 私達が似ているからなんだろうか。 彼女の不安の根源は、限りなく私と近い感覚で。 理解できてしまう。あーわかるなぁって。 ただ考えすぎてしまうか、そうしないかの違いであって。 これは、自己愛の一種? んー。どうでもいいか。そんなこと。 彼女が好きな友達であることには変わりないから。
社長には感謝してしまう。 いい人だとは知っていたけれど、 社員をゲームのコマのように思っているような 冷淡な部分も持ち合わせているイメージもあった。 「おまえひとりの面倒くらい見ちゃるばい」 仕事しなくても、とにかく会社に出てくるように。 気分が良ければ仕事すればいいし、 そうじゃなければ、隣りの公園で桜でも見てればいい。 そんなコメント吐けるような社長、 このご時世、そういないよな。 この会社にいる限り、いくらでも働き蜂になってやろうと 改めて、思う。
納得して、 「明日も行きます」 苦しそうな呼吸で、目は涙でいっぱいだったけど それでも確かに笑顔の彼女はそう言って手を振った。
明日。明日はどんな日だろう。 彼女が楽に過ごせる一日だったならいい。
decora
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