今日もガサゴソ
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2009年06月04日(木) ピクニックバスケット

八王子に居た頃、お隣に住んでいた
素敵なマリ子ちゃんが(出会ったときには還暦であったがー)
忘れられない本があるけど
タイトルも作者もわからないのー
もう一度読みたいのーーと
身もだえする(笑)物語が一冊ありました。

本の話となるとふたりでもう夢中で
浮世忘れしちゃうほどに大興奮してしまうのが常で
その物語はどんなお話だったの?
いつ読んだの?と
思い出せることを洗いざらい点検して
見つかるといいねぇと騒いでいたのでした。

マリ子ちゃんがその本を読んだのは女学生の頃で
図書館で借りて読んだもので
外国の小説の翻訳だったようでした。
ストーリーのすべては思い出せないけれど
物語の始まりのほうに
素敵な素敵なピクニックバスケットが出てきて
主人公の少女はお昼まで待ちきれずに
バスケットをあけちゃってつまみ食いなんかしちゃうらしい。
そのバスケットの中身が、夢のようで
ああ、食べたい!私もそんなピクニックバスケットが欲しいと
切実に願ったのだそうでした。

ほうほう、それはまた素敵だ!
私もそんなお話を読んでみたい!
味わってみたい!!
でも、それまで出会った物語で
そんなバスケットの出てくるお話はなかったなぁ...

マリ子ちゃんは諦めきれず
あるとき、図書館で親切そうな係員が
お探しの本があったらお手伝いしましょうと声をかけてくれたので
この物語のことを話したそうです。
すると!なんということでしょう!(リフォーム番組風だなぁ)
その図書館のお姉さん、最近読んだあれかも!と
持ち出してきた本がズバリ、その捜し求めていた本だったのでした。

ジーン・ポーター作 村岡花子訳
「リンバロストの乙女」

うわーー!聞いてみるもんだねぇ!
すごいね良かったね!

その頃、翻訳ものの少女小説をまとめて文庫化した出版社があって
「リンバロストの乙女」もその中に入っているのは知っていました。
でも装丁のいかにも!という雰囲気の赤のギンガムチェックが
非常に気になって手にとることはしていなかったのね。
でも、マリ子ちゃんがそんなに懐かしかったのだから
いつか私もその本を読もうと思いつつ
月日の流れるのは早いもので
マリ子ちゃんのお隣から引っ越して
十数年過ぎてしまっていました。

先日、町の図書館のリサイクルコーナーで
綺麗な「リンバロストの乙女」上下を発見して
ほくほくと頂いてきました。

このところ、風邪引きのためベッドでゴロゴロしていたので
「リンバロストの乙女」を堪能することにしました。


しかーーーし!
マリ子ちゃーーーん!!
ちょっとーーー!!

いや、出てくるよ、素敵なピクニックバスケットがっ。
だけど、この物語、そんな美味しいお弁当を持って
わくわく野山を駆け回るというお話ぢゃなかったですっ。
そうよ、パレアナリズムという言葉まで生み出した
ジーン・ポーターだよ、そんな生易しいお話なはずないわな。
私もうかつだった。

それは狂気と背中合わせに過去を恨んで生きている母と
希望だけを胸に困難を乗り越えていく娘の
修羅の物語なのでした。
そして、リンバロストの森や沼地の抱えている自然の深さを
蛾の蒐集で見せてくれるという
これは....なんというか、ほんとに少女小説?なファクターもあり....
アメリカの虫愛ずる姫ここにあり、という感慨に浸りました。

マリ子ちゃーーーん!
また一緒に本の話がしたいよーー。
ふたりで大興奮して
虫は怖いけど、虫好きの物語は大好きなのよーと吼えたいよ。
ふたりで薄っぺらのお財布のことなんか忘れて
空中楼閣を描いてきゃーきゃー騒いで
猫たちにギギッって嫌な声を出されて
笑い転げていた日々が恋しいな。



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