今日もガサゴソ
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2003年08月03日(日) キルト君

五年前の八月の中頃
生後八ヶ月の雄のビーグルが
我が家にやってきました。

もとの飼い主は定年を迎えるくらいの年齢の夫婦で
定年後は犬でも可愛がって過ごそうと
子犬を買ったそうです。

夫婦とも仕事は続けていて
生後半年くらいまでは散歩は必要ないと
誰かに聞いたらしく
庭先につなぎっぱなしにしていたそうです。

半年過ぎたので
さて、お散歩にでも、と思った奥さんは
犬の馬鹿力に引きずられて転び、足首をねんざして
散歩からリタイアし、
ご主人の方も、一人ではとてもじゃないが
面倒みきれない、といって
私の近所の雌のビーグルを飼っている家に
犬の見合い話のついでに置き去りにしていきました。

ばかでかい鳴き声でわめきちらし
なでられると興奮して噛み
抱っこされることを知らない
頭と足がヘンに大きい不細工な犬でした。

もっと幼い犬だったら私はもらわなかったでしょう。
子犬は子犬と云うだけで可愛いもの、
もらい手はすぐ見つかるでしょう。
でも、しつけに失敗して
捨てられて、愛され方を知らない犬を
見過ごしにできない気がして
引き取りました。

前の飼い主が付けた名を呼んでも
振り向くこともしませんでしたので
キルト、という名を新しくつけました。


お座り、待て、以外の訓練は困難でした。
名前を呼んで振り返ってくれるまで
一月以上かかりました。
その次はかみ癖を何とかしなくてはなりませんでした。

犬との信頼関係を築く手段は
ひたすら長く歩き続けることしか思いつきませんでした。
なでれば興奮して私の腕を噛みます。
そのうち、結びこぶを作ったタオルで遊んだあと、
タオルを与えて噛ませてから
なでることにしました。
次第になれて、なでて欲しいとき、構って欲しいときは
慌てて骨型のガムや棒きれをくわえて
なでてくれるように催促するようになりました。

私たち夫婦以外の人に
黙って身体を触らせるようになるまで二年かかりました。


子犬は本当に可愛い。
うちのキルト君が赤ちゃんだったとき
どんなに可愛かったろうと思うけれど
写真一枚も持っていません。

もとの飼い主は
新たにキャバリア買ったそうです。
「こんだ〜大人しくてい〜犬だぁ」と自慢しているのを
病院の待合室で聞いてしまったときは
泣いて暴れたくなりました。

キルトに惨めな子供時代を送らせて
悪い犬にしたのはあんただと糾弾してやりたかった。

でも、今、私は幸福で
キルトと長い散歩を楽しんでいるうちに
身体の調子が良くなって
子宝にも恵まれました。
キルト君は相変わらず騒ぎ屋ではありますが、
怪しい人物の出入りと
犬の散歩を目撃したとき以外は滅多に吠えなくなりました。
さんぽじゃさんぽじゃという
奇妙な鳴き声をたてていることもありますが
夜通し吠えているお向かいのワンコに比べたら可愛いものです。

気持ち良さそうに
小屋の屋根で昼寝をしている
姿を見ると
キルト君も不幸せには見えないから、ま、いいか。





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