...ねね

 

 全てフィクションです

【DRESS】 - 2003年03月24日(月)

木戸はニヤニヤしながら僕の姿を足元から頭の先まで
舐め回す様に見て言った。

「で、なんでお前は女の格好なんかしてんだ?」

絶望を感じながら、僕は何も答えられない。
棒の様に突っ立ったまま動けずにいた。
瑤子と由希は身の危険を感じたのか
いつの間にか少し離れた場所に移動していて
遠巻きにこちらの様子を窺っていた。
・・・正しい選択だ。
何をされるか分かったものじゃないからな。

「おい藤沢、なんか言えよ」

木戸は僕が何も喋らない事に苛立ちを覚えたようだ。
なんだよ、気持ちワリィ!と言い残して立ち去って行った。
意外にあっさりいなくなった事に僕は拍子抜けしたが
それと同時にもの凄くほっとしていた。
不良と言えども部活に遅刻はして行きたくないのかも知れない。
おでこに剃りこみは入っていてもそういう事には真面目なのだろうか。

彼がこっちを時々振り返りながらも僕の傍を離れていくと
陰に隠れていた妹たちが駆け寄ってきた。
そして口々に「兄ちゃん大丈夫?」とか「誰だったの?」
とか喋り出したが僕は、なんでもない、とだけ言って
今来た道を引き返した。


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