蛇腹食堂
書人*なび太

   

  




お電話
2004年03月10日(水)
昨日は舞い上がってて書けなかったが、
実は採用の連絡を頂く前に、
僕はミスをやらかした。

二次面接が終わったのは金曜日。
今思えば、
今までに比べて随分と和やかな面接だった。
「今日の結果は、月曜の夜に会議をし、
 遅くとも火曜日にはご連絡できると思います」
人事の方からそう告げられた後、
僕は複数面接を一緒に受験した女性と、
今日の感想などを述べ合いながら会社を出た。

やれることはやったし、
言うべき事は言った。
ここでダメでも後悔はすまい。
そう思いながら家に着いた途端、
バッチリ気が抜けた。

土曜日が過ぎ、
日曜日が過ぎ、
月曜日がやってきた。

「丁度今頃は人事会議やってるのか…」

そんなことを考えつつ、
面接に着て行ったスーツをクローゼットにしまおうとして、
胸ポケットに入れっぱなしになっていた、
携帯電話の存在に気が付いた。
ポケットからその四角いボディーを取り出し、
ふとディスプレイに目をやる。

着信アリ

一瞬、血の気が引いた。
着信は土曜日の夜7時。
おずおずと着信履歴を開く。
頭に03の市外局番。
嗚呼。会社からの電話だ。
スッと視界が狭まるのを感じながら、
なんとか伝言を再生する。

「あ、わたくし、
 ○×株式会社の人事を担当しております、
 ★▽と申します。
 昨日はありがとうございました。
 あの、もしよろしければ…」
ピィーッ!!プツッ…

小さなスピーカーからは、
伝言メモの容量が一杯になったことを告げる、
冷たい機械の声だけが響いていた。

一番大事な所で切れてマス。

この時の僕の気持ちを言葉にするのは難しい。
ただ、間違いなく言えるのは、
その瞬間、僕の顔には、
某まるこバリに青い線が幾重にも引かれていたに違いない。

「君は本当にツメが甘い奴だな」

自動車教習所で澤田教官に言い放たれたイヤミが、
今頃になって何度も何度も脳裏を過ぎった。

「土日は会社も休みであろう」などと勝手に決め込み、
携帯電話のチェックを怠った。
結果として会社からの連絡を2日もシカトしたのだ…。
これって思い切り「社会人失格」じゃなかろか…。
あまつさえ、伝言の内容は一番大事な所が抜けていて、
答えようにも何を答えればいいのかわからない。
とりあえず慌てて会社に電話を入れたが、
正直オシッコチビリソウダッタ。
しかも、よりによって、
人事担当の方は非常に忙しい人で、
何度電話しても全く捕まらず、
社員さんに電話があったことだけ伝えてもらったが、
その後向こうからはリアクションさえ途絶えてしまった。

「お、おわったー…」

たった一本の電話によって、
人生は一気に暗転することもあるのか。
一種の悟りにも近い心地で夜空を見上げる。
闇に瞬くお星様が、
全て滲んで見えたのは決して気のせいではあるまい…。



こんな調子だったから、
「採用」の声を聞いた時の、
僕の舞い上がり様は容易に想像して頂けるだろう。
しかし、あの「もしよろしければ…」の後に、
何が入ったのかは、今もってわからない。
だが、今回のことは非常に重要な教訓を残した。
例え電話をかけてくるお友達は少なくても、
これからは携帯電話のチェックはマメにしよう。
うん。




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