夕方6時ごろ母からメールがあった。
「今日もお父さんの機嫌がいいよ。今手を振って家の中を歩いてる」
鬱病が治らず、ひどい状態が何年も続き、電気療法を受けている父。 一昨日電気をかけたので、調子が良いらしい。 私は何年も父の良い状態を見たことが無い。先日烏山に行った時も、気分が悪いせいか、とても機嫌が悪かった。
「父の笑顔を見たい」
せめて、いい表情をした父を見たいと思った。
「これからそっちに行く」と母に電話をした。
栃木の姉の家まで一時間半ぐらいかかる。それでも往復するのに億劫だとは思わなかった。
案の定娘は行かないと言い、息子は行くと言った。
私が知っている最近の父はいつも愚痴ばかり言っていた。 目が見えない、耳が聞こえない、歩けない、オシッコが出ない。 念仏を唱えているようだ。
ものすごく機嫌がいいというわけでもなかったが、愚痴をこぼさない父に会うことが出来た。歩かなきゃ足腰が弱ってしまうという意識があるせいか、家の中を歩くことがあるのだが、手を後ろで組んでいるので、
「それじゃつまづいた時に危ないよ」
と声をかけると、すなおに手を下ろした。いつもなら必ず反論するのに、電気をかけた後は2〜3日調子がいいらしい。そんな父の姿を見られたことがうれしかった。
収穫はそれだけではなかった。 学校にもバイトにも行けない息子を今の状態から救い出したいと思っていた。気分を変えるためにも、姉の家に連れて行きたかったのだ。
姉は息子に時間をかけて話した。親だからできることと、親にはできないことがある。私が言っても聞かないことでも姉が言うと聞く事もある。 姉が色々言ってくれたことが息子の心に響いたかどうかはわからない。
それでも、親とは違った角度で見たことを話してもらうのもいいことだと思う。
息子は睡眠薬を飲んだ当日と翌日バイトを休んだ。 今度の土日は元々主人と山に行くことになっているので、バイトはお休みだ。その次の週に行けるのかどうか、疑問である。
そして学校も。 明日行けるのかどうか。


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