「エロおやじ」と言われる人がいる。 看護婦の白衣をさわったりするので、みんなに嫌がられている。でも、そんなに悪い人ではなさそうだ。ただ、言葉がやけに女っぽいのが気になっていた。
そのエロおやじ(Cさん)が腰痛の注射をしている間、先生と話をしていた。Cさんは慶応を中退し、サラリーマンを23年やった後、脱サラしたと言う。先生がいなくなったところで、
「脱サラして何をやっているんですか?」
と聞くと、
「農業ですよ」
と言う。
「何を作っているんですか?」
と聞くと、
「種蒔いて、花を咲かせてる」
「園芸農家さん?」
「そうそう」
「Kさんは何の花が好き?」
そう聞かれ、
「ニゲラとかマトリカリアとか・・・たくさんあって何を答えたらいいかなぁ」
そばで聞いていた看護婦のAさんが、
「ずいぶんオタッキーじゃない?」
と言う。
花好きの間で、ニゲラとかマトリカリアは珍しい花じゃないよと思っていたら、
Cさんが、
「そうでもないよね」と。
思わぬところで、Cさんとの花談義が始まった。
Cさんは白くて小さくて横に這う花が好きなのだと言う。
私は、例えばハーブなら「カラミンサ」のように、小さい花が好きだと言った。
デルフィニウムでも、「ベラドンナ」がいいとか。とにかく私は小さくて線の細い可憐な花が好きだ。
火曜日はいつも忙しいのに、なぜか今日は6時ごろの患者の数が少なくて、10分ぐらいCさんと花の話をしていた。
「脱サラして、こんなに楽しい仕事があったのかって思った!すごく幸せだよ」と語るCさんの手は、土で汚れ、爪の間も真っ黒だった。
「エロおやじ」という印象しかなかったCさんのイメージが大きく変わった。また花の話をしたいと思う。今度会う日が楽しみだ。
|