もう2〜3週間になるだろうか。 父が外泊して我が家に来た時、父の髪を染めようと思った。 父はずいぶん前から、髪が真っ白になった事を気にしていた。だから私は染めたいのだと、勝手に思い込んでいた。でも父の気持ちは違ったようだ。
ドラッグストアで、カラーを選び、その夜父に「髪を染めようね」と言った。 父にはそれが聞えなかったようだ。前開きのパジャマを着せて、髪を染め始めると、
「何をするんだ!」と父は大声で怒った。 そして私の手を振り払い、自分の手で髪をぐしゃぐしゃにした。私の洋服には黒い液体が飛び、父の手は真っ黒。地肌にも色がついてしまった。
「今まで白かったのに、急に黒くなるのは嫌だ」と父は言った。 「だから、自然に染めてあげるから」と言ったが,ダメだった。父は怒ったまま、パジャマを脱いでしまった。
私はポロポロと涙があふれた。父のためにと思ってやったことが、ありがた迷惑だったなんて、夢にも思わなかった。
髪は中途半端に染まったまま、父は病院に帰って行った。 看護婦や、看護助手さんに髪のことを聞かれたらしい。
看護助手さんが、 「Sさん、自分だけじゃなくて、病人を看る方だって、髪が黒くなって若々しくなると気持ちが違う物なんですよ。娘さんの気持ちも考えてあげてください」と言われたらしい。
父は反省し、母に「ききに謝るから、ちゃんと染めてもらう」と言ったらしい。 母は、「謝るのなら、ちゃんと自分で謝ってね」と言った。 何日か経ってお見舞いに行った時、父は 「ごめん。髪染めてくれ」と言った。 あの頑固な父が本当に謝るとは思わなかった。
それから、色々あって、染めることができなかったが、今日父の髪を染めた。父は髪が真っ白になったので、ダークブラウンで染めても、なぜかグレーに染まる。 それがまた素敵だ。 母と「いい色になったね」と話していた。
髪の色が違うだけで、かなり若々しく見える。やはり私もその方がうれしい。
さて、看護婦さんの反応はどうでしょうね。
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