うつ病で摂食障害などを抱える看護師。色々あるけど、生きて行くのだ!

2002年06月07日(金) 看護婦の心臓は・・・

 廊下に出ると、Tシャツに血がついた子供を抱いた若い女の人が立っていた。今来たばかり、という感じだったが、傷を見たら結構深かったので、カルテを作るよりも先に、まず処置室へ入れた。

 若い女性は年の離れたお姉ちゃんだった。ソファアから飛び降りたらサイドボードに当り、ガラスが刺さったらしい。先生に知らせ、ナート(縫合)の準備にかかった。ガラスの破片や汚れを取り除くため、洗い流す。他の看護婦に「セッシ(ピンセットのようなもの)で、肉を持ち上げてもらえますか?」と言われた。私はセッシを持ち、めくれた肉を持ち上げた。お母さんはとても辛そうだけど、私達は、すばやく処置をしなければならない。麻酔の注射の準備をしたり、縫合セットや手袋を用意したり。
 先生が麻酔の注射をし、効いてくるまで少し時間がかかる。麻酔の注射は、3人がかりで押さえつけても大変なほど「痛い、痛い」とあばれて大変だった。麻酔が終った後、私は「何歳ですか?飴をあげてもいいですか?」と聞いた。飴を口にしたその男の子は、少し機嫌が治ったが、お母さんに「縫う時はまた泣くと思うので、その時は口から出してください。誤飲するといけませんから」と言った。

 先生が「やるよ〜」と言うので、飴を出させ、また3人がかりで押さえつける。
「痛いよ〜お母さんもう痛いことしないで。やめさせて〜。もう痛いことしないって言ったでしょう?」と、泣き声が響き渡る。私達は押さえつけるため、手を緩める事はできない。

 私はいつも、ポケットに小さなプーさんのついた鍵を持っている。ロッカーの鍵なのだが、こんな風にとてもかわいそうな状況の子供にだけ、特別そのプーさんをあげることにしている。私は、ポケットに手を突っ込んで、鍵からプーさんをはずした。そして、その子に渡すと、他の看護婦が「あれれ?何か出てきたよ」と、言い、手の中にあるプーさんの方に気持ちが少し傾いた。そして、お母さんとは何かを買ってもらう約束をしていたようだ。縫っている間も、お母さんとの会話は続いていた。
 
 それでも、縫う時が痛かったらしく、また男の子の叫び声響き始めた。私達は絶えず声をかける。そんな風にして、みんな汗だくになりながら、男の子のナートは終った。

 そのプーさんは3代目。つまり、今の病院に一年半勤めて、3人の子にあげたこになる。また同じキーホルダーを買ってくるつもりだ。本当に小さな物だけど、ほのちょっとでも、気持ちが紛れたらいいなと思う。とにかく動いては危なくて縫うことができないからだ。

 それに、一生や二葉がまだ小さい頃、「一生君は薬をもらったのに、ふーちゃんはもらえない」と泣いた二葉に、事務の人がカエルの人形をくれたことがある。二葉はそれがとてもうれしかったらしく、今でも覚えている。

 たくさんの血や、傷を見て思う。看護婦は普通の神経ではやってられない職業だなぁと。母に今日の話をすると、「看護婦をしている時のこゆきは別人だね」と言われた。

 「ナースのお仕事」の朝倉並にドヂだけど、仕事の時にはがんばっている私なのです。





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