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2020年03月30日(月) 「ジラフとアンニカ」のこと

 今日はアレグラを服用し忘れたので、日中は意識が朦朧として酷い目に遭った。

 「ジラフとアンニカ」(atelier mimina)をクリアしたので感想を。
 見知らぬ場所で目覚めた猫耳の少女アンニカ。そこでアンニカはジラフと名乗る青年と出会う。初対面のはずなのに何故か親しみを込めてアンニカに接するジラフは、結界のせいで立ち入ることのできないダンジョンの探索をアンニカに依頼する。この出会いをきっかけに、スピカ島を舞台にしたアンニカの大冒険が今始まる。この島に眠る悲しい出来事と共に。

 猫耳少女アンニカを操作してスピカ島を冒険する3DADV+リズムアクション。アンニカの操作は移動、場面に応じた行動をとるアクション、視点移動が基本だが、ダンジョンをクリアする毎にジャンプや泳ぎなど取ることのできる行動が増えていく。そして、新たに習得した行動により行動範囲が広がっていく。
 ダンジョンでの目的は最深部にある星のかけらを入手すること。最深部にはボスが登場し、リズムゲームで戦闘を行う。ボスが画面奥から投げてくるボールが左右にあるマーカーに重なったときにボタンを押すとボスのゲージを減らすことができ、曲が終わった時点でボスのゲージが無いと勝利となる。ただし、ボスが投げてくるのはボールだけでなく障害物もあり、これに当たると一定時間動けなくなる。

 プレイして徹頭徹尾強く感じたのが、スピカ島を構築する登場人物や地形などの要素のきめ細やかな描写。このゲームの登場人物は誰も彼も個性的で親しみ深く、スピカ島での楽しい冒険を支えてくれる大事な存在となっているが、個性際立つ登場人物に負けないくらいの存在感を示すのが主人公のアンニカ。彼女の動きはとにかく元気いっぱいで、操作しているだけでも様々な表情を見せてくれて、とても楽しかった。中でもジャンプの仕草には大きな衝撃を受けた。今まで様々なアクションゲームをプレイしてきたが、これほどまでに楽しそうなジャンプを見せてくれるキャラクターはそうそういるものではない。このジャンプに、キャラクターの動きにどれほどの気を配って製作されたのかを垣間見た気がした。
 キャラクターだけでなく、この島の景色もまた魅力的である。無数の海鳥が飛ぶ夜空やタンポポの綿毛が飛び交う草原など、幻想的な場面が数多く用意されており、その度に足を止めては幻想的な雰囲気に浸る心地よさを覚えた。また、光の描写にも非常に力が入っており、一日の移り変わりが現実のように感じることができた。特に、砂浜に朝日が差し込む様は格別の美しさ。この景色を見たいがために朝を迎えるのが待ち遠しかった程である。あと、高台からの眺めも遠方までちゃんと見渡すことができて絶景三昧であり、ここでも足を止めてその景色に見惚れることが多かった。そのため、普段はあまり使用しないSteamのスクリーンショットを、この作品では何度も使う羽目になった。ゲーム中の様々な印象深い景色は、最早これは背景ではなく風景と呼ぶべきではないかと思ったほどである。ただし、遠方まで見渡せるということはそこまでグラフィックを描写しているということであり、グラフィックの処理能力をかなり必要とする。私が使用しているGTX1060(VRAM 6GB)では、フルHDでプレイすると時たま描写がかくつくことがあった。なので、このゲームを最高の画質で快適にプレイするには、それ以上のVGAが要るようである。十分に楽しめない環境でプレイしたことはこのゲームに対して申し訳ない限りであり、ゲーマーとして忸怩たる思いを抱く。
 そんな素晴らしい画面描写に気を取られがちだが、随所に散りばめられた遊び心(に見せかけた製作者の本質)も忘れてはならない。案山子から引けるおみくじの意味不明さや、顔出し看板の珍妙な意匠など、ちょっと常軌を逸して理解できるかできないかの瀬戸際にあるような存在がスピカ島には数多く見受けられ、それらに出合う度に製作者の類まれなる感性に対してただひたすら感服してしまった。「トリオ・ザ・パンチ」が好きな私は、こういう頓痴気な要素には敏感に反応してしまうのである。
 あと、幕間のデモが漫画形式で表現されるのもこのゲームの大きな特徴。コマ割りされた流れを追うのは漫画そのものだが、キャラに動きがあったり擬音が追加されたりとコンピュータゲームならではの演出も加わり、とても新鮮な演出であった。一方で3Dキャラによるデモもあり、こちらはこちらでしっかりと作り込まれて高品位な内容である。2Dと3Dの使い分けも的確で、ゲームの流れに上手に抑揚を付けているという印象を受けた。

 ゲームの方は、3DADVの場面は最後のダンジョンを除いてはそれほど厳密な操作を要求されることもなく、一方で時間の要素が随所に盛り込まれて適度な刺激となり、移動や謎解きをアンニカの気持ちいいアクションと共に快適に楽しめた。ただし、最後のダンジョンはそれまでのミスの回数をここだけで超えるほどの難易度であり、かなり手ごわい思いをさせられた。あと、道中には収集要素のねこ絵を集める楽しさもあるが、これがまた隠し場所が絶妙。変に入り組んだ場所には無いものの、ちょっとした観察力や注意深さを要求するところは多分にあり、非常に探し甲斐のある配置には何度も感心させられた。
 一方、ボスのリズムゲームは本気の内容。クリアするだけなら難易度を下げればいいが、実績やおまけ絵の解除に必要な高得点を取るとなると厳しめの評価が立ちはだかる。最上位のSランクを取るには、単にミスをしないだけでなくほぼGREAT判定を取らなければならず、そのせいでボスキャラのリリィの踊りを楽しむ余裕などまるで無し。この辺りに、製作者の音ゲーに対する姿勢が現れている気がした。

 物語の構成も素晴らしかった。中盤までは牧歌的な雰囲気の中、ジラフの依頼どおりにダンジョンを次々と攻略するアンニカの大冒険が主体となるが、そこから物語は急展開してこの世界の謎に迫ることになり、一気に緊迫感が増した。ただ、あまり明かしてしまうとゲームの魅力を損なうので、ここでは多くは語らないことにする。
 エンディングではゲーム中に登場した背景やキャラクター、果ては小物まで数多くの要素を回収してくれて、非常にすっきりする終わり方が非常に好印象。とても丁寧に構築された作品であることを再認識させられた。エンディングを迎えた後にねこ絵を全て集めた景品を受け取ったときは、感動で涙が出そうになった程である。

 不満点は、行動に制約を及ぼす要素が気になったことかと。泳ぐ時間については進行の都合上仕方ないにしても、ダッシュは移動の快適さが格段に向上する故にゲージ制にする必要はあったのか疑問であった。元気いっぱいのアンニカだから、星のかけらの力を得れば疲れ知らずで走り抜けてもいいのではと。もしくは、ゲージの回復速度を大幅に上昇させて欲しかった感がある。
 あと、収集要素に過ぎないねこ絵集めをゲームの進行に必要不可欠なものにしてしまったのもどうかと思った次第。必要なものにするとしても、枚数が多すぎるように感じた。

 初期の体験版をプレイしたころは、何故この作品の製作にこれほどまで時間が掛かるのか正直疑問に思っていたが、完成版をプレイして納得。童話のような世界観を丁寧に、そして完璧に描くため、細部に至るまできめ細やかな配慮が行き届いた作品であり、そのおかげでスピカ島の冒険を心行くまで楽しむことができた。今となっては逆にこの期間でよくぞここまでの非の打ち所の無い完成度に作り上げたことに驚愕する次第である。
 ゲームからはアンニカからの溢れんばかりの元気を、物語からは消すことのできない悲しい過去を癒してくれる未来への希望を与えてもらった。心温まる素敵な物語をありがとうございました。
 さて、エンディングを迎えてこれから実績埋め。といっても、残るのはほとんどがリズムアクションの評価に関するもの。音ゲーを引退して久しいが、昔の情熱を呼び起こして老体に鞭打って頑張ってみようかと。


氷室 万寿 |MAIL
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