雪さんすきすき日記
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2019年04月16日(火) 「Flan」のこと

 では、「Flan」(AECRNIA)の感想を。
 少女が目覚めた場所は暗く寒い世界だった。彼女はそこで1人の黒騎士と出会う。彼女は何故この世界に来たのか?黒騎士がここにいた理由は?少女と黒騎士は互いに力を合わせて、この世界の探索を始める。

 少女と黒騎士の2人を同時に操作するアクションゲーム。操作は左スティックで少女の移動、Lボタンで少女のダッシュ、右スティックで黒騎士の移動、Rボタンで黒騎士のダッシュ。2人で協力して敵の攻撃や行く手を阻む仕掛けを乗り越えて、画面の上に向かって進むのが目的。最初の面を除く各面には最後にボスが登場し、倒すことで次の面に進むことができる。
 黒騎士は敵に近づくと、手に持った剣で自動的に敵を攻撃する。これがこのゲームでの唯一の攻撃手段である。また、黒騎士のダッシュ中は足場の無い場所も移動できる(ダッシュしないと落下する)。ただし、黒騎士は少女から一定距離を離れると凍結して動けなくなってしまう。凍結した黒騎士は少女が近づくと再度動けるようになり、Rボタンを押すと少女の近くに現れる。
 一方、少女が行える行動は移動とダッシュのみ。また、敵から攻撃を受けるのも少女のみ。一度攻撃を受けるとしばらくの間回復待ちとなり、その間に再度攻撃を受けると倒れて再開地点に戻される。また、足場の無い場所から落下しても再開地点に戻されてしまう。

 暗く寒い世界を敵の攻撃に怯えながら進むという不条理な目に遭う少女と、時には剣となり時には盾となって不憫な少女を守り行く手を切り開く無言の黒騎士。そんな幼い少女と背の高い黒騎士という組み合わせの時点で、既に感情に大いに訴えるものがある。言葉は無くとも2人で協力して進む様を見ていると、単にキャラクターを操作している以上の感情移入を引き起こし、互いを必要とし頼る姿には物語を感じざるを得ない。
 また、ゲーム中や幕間に流れるデモには一切の言葉が無い。デモの内容はもちろんのこと、2人の旅路や背景の謎めいた物体など目にした映像が様々な想像を掻き立てて、それがこの作品にプレイヤーを惹き込む魅力の1つとなっている。

 システム的にも、2人の使い分けが上手に組み込まれた調整となっている。ゲーム中には黒騎士の機動力の高さを活かした仕掛けが数多く登場し、その仕掛けを少女と協力して進んでいくところに、2人を一緒に操作する面白さがふんだんに盛り込まれていたのがとても印象に残っている。また、少女が敵の攻撃を受けないように逃げまどいつつ、黒騎士で敵を倒していくような場面では、慣れないうちは混乱すること必至だが、そのもどかしさがまた面白くもあった。そして、慣れると少女が敵を誘導してそこを黒騎士が倒すような、2人を同時に自在に操れる面白さに変っていった。
 また、黒騎士は少女から離れてしまうと凍結して動けなくなり、それが敵との戦闘の最中だと少女が一気に窮地に陥ってしまう。なので、特に戦闘の場面では少女から付かず離れずで黒騎士を操ることが求められ、その距離感が実に絶妙であった。黒騎士がいないと敵を倒せず、少女がいないと黒騎士が動けずというように、互いが互いを必要としている状況がシステムでも再現されているところに、また感情を揺さぶられるものがある。
 あと、少女のダッシュは連続で一定時間しか行えないのだが、ダッシュ可能な時間が少女を中心に表示された半球が徐々に小さくなっていくという表現で、それが非常に分かりやすかったのがとても好印象。おかげで、ボス戦などのダッシュが重要な場面でもしっかりとダッシュの残り時間を把握できて気持ちよく操作することができた。

 ところで、ゲーム中には青く輝いた八面体が登場し、それに少女が触れると記憶を徐々に回復していくという収集要素がある。回復した記憶は一度ゲームをクリアすると閲覧可能となり、そこにはこの物語を始めとして、黒騎士やラスボスの正体、この世界や敵の意味、果ては製作者の自分語りからこの作品の主題まで、この作品を理解する上で貴重な情報が詰まっている。記憶を全部集めてからこの作品を振り返ると、また違った姿が見えてくるかと。
 ただし、表面と裏面(2周目になると入れる)全部で100個の記憶があり、それらを集めるのは結構至難の業であった。1面につき記憶が10個(表面の最終面は20個)という情報が事前にあれば少しは簡単になったかもしれないが、それに気づいたのが2周目であり1周目では結構取り逃したので、表面は各面2周ほど総当たりで探す羽目になった。ただ、その2周したおかげで、2面での記憶探しはかなり楽になったが(記憶の場所がほぼ同じなので)。
 この作品について非常に重要な情報が得られる記憶集めという要素だが、その手間を考えると収取要素に興味が無ければ達成は難しいであろうというのが正直な感想。あと、折角本編が言葉無しで想像させる内容だったので、ここに言葉が出てくるのは野暮ではないかとも思ったが、さすがにこの情報量を伝えるには言葉に頼らざるを得なかった。
 裏面は単に敵が増えただけで地形はほとんど同じだったので、あまり新鮮味が無かったのもやや残念なところ。裏面専用のボスもいないので、本当に記憶を集めるためだけに存在する面であり、やりこみ要素としては弱さを感じざるを得なかった。

 システムや演出など作品の至るところが情感に満ちていて、少女と黒騎士の2人を一緒に操作するということに対してこの作品ならではの特別な感慨を持ってプレイすることができた。記憶を全て集めるのは大変だったが、作品の深いところまで知ることができて、集めた甲斐は十分にあった。
 ところで、セーブポイントが2人で椅子に座るというのは、やはり「ICO」を意識しているのだろうか。


氷室 万寿 |MAIL
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