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2016年10月18日(火) 続・「Lily 白き百合の乙女たち」のこと

 昨日は「Lily」の本編をクリアして、満足感の余韻に浸っていた。

 では、「Lily 白き百合の乙女たち」(disfact)の感想を。
 仙台市の港に隕石が落下して以来、人々を襲う黒閖と呼ばれる生物が出現し、被害が生じるようになった。時を同じくして、この黒閖に対抗できる少女が誕生するようになる。黒閖への切り札となる彼女たちはリリーと呼ばれ、彼女たちを養成するホワイトリリー学園が創設された。
 この作品は、隕石が落下してから約20年後、ホワイトリリー学園に通う中学2年生の青葉 百合果が主人公のSRPG。通学中での不思議な物体と出会い、仲間と共に黒閖と戦い、そしてその最中に数々の真実を知る。

 システム的には一般的なターン制のSRPG。ユニットに指示を出して移動や攻撃を行い、各マップに設定された勝利条件を満たすのが目的。
 ユニットの行動は移動と攻撃、スキル、アイテム使用。スキルはユニット固有の行動で、攻撃、回復、補助をMPを消費して行う。攻撃は属性の相性でダメージや被ダメージが増減する。スキルでの行動は到達距離や攻撃範囲が通常攻撃より広いものが多い。
 ユニットは攻撃やスキルを使用することで経験値が入り、レベルが上がると能力が上昇。その他、武器と防具を1つずつ、潜在能力をスロットの数だけ装備可能。物語が進むと、ユニット固有の潜在能力も解放される。
 そして、特徴的なシステムがカップリングシステム。特定の相手の2マス以内にいるとお互いの好感度が上昇する。好感度が一定以上になると、戦闘時に敵の攻撃を他のキャラが受け流して反撃するカップリングカウンターが確率で発動し、最大になると協力して発動するカップリングスキルが使用可能となる。
 ゲームは、ADV風のシナリオパート→SLGによる戦闘パートを繰り返して進行する。全3部構成。

 ユニットの体力が敵味方ともに低く、2〜3回の攻撃で戦闘不能になる。また、敵の攻撃範囲内から攻撃をすると反撃を受ける。このため、敵の攻撃範囲外からスキルで体力を削り、その後一気に止めを刺すという戦い方が主流となる。なので、一度に多数の敵を相手にするのは困難なので、1〜2体をおびき出しては各個撃破という割と地味な戦いにはなるが、時間をかけて丁寧に対処をしていけばまず負けることは無い。ただ、ターン数に制限がある面では、かなりやり直しをさせられたが。
 また、ユニットの数が最大13体と非常に多いが、直接攻撃、スキル攻撃、補助とそれぞれの強みが明確なので、戦闘地の役割分担もそれほど悩むことは無く、二手に分かれるときでもこれらの役割を持つキャラが満遍なく別れれば何となくでも大丈夫であった。そして、数が多いので贔屓のキャラがどうしても出てきてしまい、それだけ使用頻度が高くなりレベルが突出してしまい、後から別のキャラを追いつかせるような羽目にもしばしば陥ったりも。個人的には、鉄壁の防御力を誇り敵の攻撃を受けても微動だにしない姿が頼もしい若林 月と、敵の行動を止める不動状態が3マス先まで届くおかげでどれだけの窮地を脱出できたかがこれまた頼もしい花京院・A・絵巳が最終的にお気に入りとなった。

 物語は仙台市を舞台に展開するのだが、これが凄い。スタジアムや温泉等の名所、伊達政宗縁の史跡、七夕や芋煮会といった行事など、仙台独自の魅力をシナリオパートを通じて紹介してくれる様子はさながら観光案内で、仙台という地に興味を抱かざるを得なかった。特に、秋保温泉のある地が仙台市に併合された経緯について事細やかに解説された件には大いに感服し、そして製作者の本気度合いを知らしめられた次第であった。そして、それらを紹介する経緯の中に大小様々な伏線を織り込みつつも仙台の過去から現在、そして未来まで繋ぐ物語を築き上げ、開幕時からはまるで想像もつかなかった壮大な展開が繰り広げられる。仙台という土地を舞台にこれだけ深い考察と緻密な物語の組み立てができるのは、ひとえに郷土愛のなせる業であろうと、深く感心させられた。先にプレイしていた方の評判を見ても当時は半信半疑だったが、実際にプレイしてみてただひたすら納得。個人的にはどちらかというと苦手とする結末とはなったが、それでも物語の面では高い満足度を得ることができ、クリア後の余韻もとても心地よいものがあった。
 あと、キャラの名前にも仙台の地名が入っている徹底ぶりにも感服。青葉と宮城野という苗字ですぐに分かった。そんな中、違和感を持つ名前のキャラが1人だけいるのだが、その伏線もまさかの形でしっかりと回収されていた。ただ、登場人物が多くてシナリオパートでの個々のキャラの印象はやや薄い。数分のシナリオパートと1時間の戦闘パートでは、受ける印象はどうしても戦闘パートでの方が強くなってしまう。 
 歴史に関しては全てが史実なのかどうか。歴史にありがちな後世の創作も入っているのかもしれない。なので、この辺りは物語として割り切って受け止めた。ただ、もし全てが本当であれば、仙台の礎を作った伊達政宗というのは偉大なる為政者だったのであろう。地元の人が誇りに思うのも理解できる。

 作中に使われる楽曲はとにかく多く、もちろんキャラ毎にテーマ曲も用意されている。その中でも一番印象に残っているのが、百合果のテーマ曲である「超克の天使」。バイオリンが奏でる荘厳かつ優美な音色が深く心に響く名曲はさすが主人公の面目躍如で、昨日のクリア後はずっとこの曲を聴きながら余韻に浸っていた。なお、この曲名もしっかりと物語の伏線になっていた。
 そして、曲の使い方がとても上手い。ここぞという場面でこれ以上無いほどの選曲で盛り上げてくれるので、プレイヤーとしてもここが正念場だと奮い立たせられる。それが、実に心地よい。ここぞというときに「超克の天使」が流れると、涙腺を刺激されずにはいられない。

 戦闘パートでは、敵の移動範囲と攻撃範囲が個々および全体で表示される機能について、ユニットの移動範囲を見極める際に非常に楽をさせてもらえた。その快適さ故に、全てのSLGにこの機能を搭載して欲しいと思ったくらい。
 一方で大きな不満点も。建物や壁、鳥居など高さのある構造物が配置されているマップがあるのだが、通常の斜め上からの視点では構造物の向こう側が隠れてしまう。これを回避するために上方視点に切り替えることができるのだが、これが非常に使い勝手が悪い。キャラを選択して移動させるところまでは普通に機能するのだが、いざ攻撃となると選択したキャラが画面上端に表示されて全然関係ない場所が中央に位置し、しかもこの状態でマップがスクロールしなくなる。当然、この時点で画面外に表示されている対象物は指定できない。というわけで、端的に言って上方視点が全く機能しないのである。仕方ないので、構造物の向こう側は感覚的にカーソルを移動させるしかなく、これが面倒この上無かった。
 あと、カップリングシステムはよほど意識していないと使いこなすのが難しいという印象。カップリングカウンターもカップリングスキルも、戦闘時に2人が近くにいなければいけないという大きな制約が課せられるし、そもそも、それを使うための好感度を上げるのも、意図して配置していかないとなかなか上がらない。結局、クリアまでにカップリングカウンターは3回しか発動せず、カップリングスキルも2〜3回しか使わなかった。この作品の特徴的なシステムではあるが、どちらかというとやり込みプレイヤー向けのシステムなのかもしれない。ただ、このシステムまでに伏線があったのには驚かされた。

 私にとっては適度な難易度で、仙台への郷土愛が育んだ壮大な物語を、数々の伏線と共に余裕をもって楽しませてもらえ、大変満足している。続編も既に発表されており、まだまだこの世界観を楽しませてもらえそう。

 ただ、クリア後の追加マップは当然難易度Lunaticであろうことから、恐らく本編のように楽しむことはできないので、気が迷ったらプレイすることに。


氷室 万寿 |MAIL
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