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2014年05月30日(金) 続^3・「弾幕アマノジャク」のこと

 「弾幕アマノジャク」(上海アリス幻樂団)は、「東方輝針城」の5面ボスである鬼人正邪を主人公とした弾幕STG。「輝針城」で幻想郷転覆に失敗して追われる身となった彼女を捕らえるために、回避不可能な弾幕で襲い掛かる追っ手達。それに対して、スペルカードルール無視の反則には反則で対抗と、アイテムの力を借りて立ち向かう。
 東方Projectのボス戦のみで構成された内容。敵弾に被弾せずにボスを倒すとクリアだが、各ボスの放つ弾幕は本編よりも遥かに高密度や高速の弾で構成されており、回避するのは不可能と”されている”。しかし、正邪の使用できるアイテムはいわゆるボムから瞬間移動、一定時間無敵、自機狙い弾が向かうようになるデコイなど全部で8種類であり、攻撃に応じて適切なアイテムを適切な頃合で使用することにより敵の弾幕を無力化したり楽に回避できるようになって難易度を格段に下げることができる。先の面に進むと、アイテムをメインとサブで2種類装備可能となり、効果もメインとサブでそれぞれ異なる。

 回避不可能弾幕に反則アイテムで対抗というのがこの作品の特徴となっている。にもかかわらず、実際には弾幕は全て回避可能であり、既に全面ノーアイテムクリアも達成されている。本当に回避不可能な弾幕であればたとえば「文花帖」の5-4「フロギスティックレイン」のようにすれば良いにも関わらず、何故このようなシステムを否定するような弾幕にしたのか、プレイしていて非常に不可解であった。

 いろいろ考えて、先ず最初に思い浮かんだのが上級者への配慮。アイテムの選択と使用する頃合が適切であれば、この作品の難易度は最終日だろうが決して高くはない。そこで物足りなさを感じたプレイヤーにノーアイテムクリアという挑戦課題を用意したというもの。しかし、それならばシステムを活かす方向で高難易度の回避不可能弾幕を用意すればいいので、この考えはまるで腑に落ちなかった。
 次に思い浮かんだのがZUN氏の弾幕に対する哲学。全ての弾幕は回避可能でなければならないという哲学を持っているのではないかと。しかし、その哲学はこの作品の構想自体を否定するので却下。

 そして、おまけテキストを読んで漸く自分に納得のいく考えを導くことができた。成功体験である。
 この作品には、回避不可能とされている弾幕をアイテムの選択と使用によりクリアしていくことで、攻略の成功体験を積み重ねてもらうという趣旨が込められている。なるほどと合点のいく話ではある。自分で考えた手段がクリアという結果に結びつき、しかも相手が回避不可能弾幕とあれば大きな自信になるであろう。
 さて、ここで本当に弾幕を回避不可能にしているとこの作品はこの時点で終わりとなり、後は他のSTGに触れてより理解を深めてもらうこととなる。しかし、ここで弾幕を回避可能にしておけば、「あれ、この弾幕実はアイテム使用しなくても攻略可能では?」と考えたプレイヤーに対して、新たな成功体験の場を設けることができるわけである。もちろん、その成功体験をするには、弾避けや誘導、パターン作成などの(アイテム使用に比べると)より高度な技術と、繋がるまで繰り返し挑戦する根気が必要となり、アイテム利用に比べて格段に敷居は高い。とはいえ、この成功体験は他のSTGでも十分に通用するものであり、ZUN氏の思惑にもより沿うのではないかと思った次第である。
 しかしながら、この考えはアイテム使用と未使用では難易度の差が大きすぎるということで十分に否定できる。なので、何故システムを否定するような弾幕にわざわざしたのかという疑問に対して自分を納得させる以上の説得力は無い。

 あと思いついたのが、実績のため。これこそシステムを全否定する愚の骨頂であり、真っ当な製作者ならまず選ばない選択肢であるかと思われる。とはいえ、「妖精大戦争」でアイスバリア未使用でスペルカードをクリアすると最も高い評価が得られるという、これまたシステム全否定な前科があるので、この考えもまるで無視はできないのであった。

 そんな感じで、いろいろ考えて一応の結論は出すことができたし、昨日表明したように全面ノーアイテムクリアも断念したので、これで「弾幕アマノジャク」は一段落とする。


氷室 万寿 |MAIL
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