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2013年02月24日(日) 「PROJECT REPLISER」のこと

 とりあえず感想が書ける程度のプレイ内容になったものの、忙しさにかまけて先延ばしになっていた「PROJECT REPLISER」(AQUA FACTORY)の感想を。

 人類が多大なる犠牲を支払って構築した量子コンピュータ”Enigma”。それは実世界を完全に情報化し、その技術に未来を委ねることで人類に恒久の平和がもたらされた。しかし、同時にそれは平和を維持するために人類を監視、管理し、人類の発展はそこで停止した。
 この事態を予見していた開発者が遺した1つのプログラム。人類の未来を取り戻すため、Enigmaを置き換えるためのものである。

 この作品は、Enigmaから人類を解放するプログラムの処理を縦STGに擬えたもので、Enigmaのセキュリティを突破して本体を破壊するのが目的となる。また、超多様プレイスタイルSTGと銘打たれているとおり、自機の武装の多様性が大きな特徴でもある。
 自機の武装はカートリッジと呼ばれる攻撃システムがαとβの2種類、そしてガンマウェポンと自機の両側に位置する無敵のビットで構成される。
 カートリッジはいわゆるショットで、αとβそれぞれ12種類(!)から選択し、それぞれにメイン武装とサブ武装が設定されている。メイン武装はその名のとおり攻撃の主軸になるが、使用中は移動速度が低下し、エネルギーを消費することから弾数制限もある。サブ武器は、ビットから発射される補助的な攻撃でメイン武装を使用しているときしか発射されないが、エネルギーは消費しない。ここで、一方のカートリッジのメイン武器を使用しているときは、サブ武器はもう一方のカートリッジのものとなる。また、メイン武器はαとβ片方ずつでも、両方一緒(オーバーロード)でも使用可能だが、オーバーロード時にはサブ武器は使用されない。
 ガンマウェポンは特殊な効果を持つ武装でこれも12種類から1つ選択。その効果は、ボムや攻撃補佐のような攻撃的なもの、無敵や囮、敵弾反射など防御的なものなど多種多様で、中にはカートリッジのエネルギーを代替するなどこのシステムならではのものも。ガンマウェポンも使用する際にはエネルギーを消費するが、カートリッジとは別に独立してエネルギーゲージが存在する。効果の持続は限定的だが威力は絶大で、このガンマウェポン次第で戦局が大きく左右されるほど重要な武装である。
 武装の組み合わせだけでも12^3=1,728通りと膨大な数になり、この中からより効果的な組み合わせを見出して攻略を進めることとなる。

 ゲームの展開は、道中を雑魚を撃破しながら進んで面の最後に待ち構えるボス(防御プログラム)を破壊するSTGとして一般的な流れである。しかし、縦STGという体裁をとってはいるものの道中のスクロール方向は上だけではなく左右や斜め、もちろん後ろにも変化する変則的な面構成であり、自機の武装もそれに対応して多方向に攻撃できるものが多い。また、地形も存在し、スクロール方向と合わせた仕掛けや罠も多数備わっている。2面以降はαルートとβルートに分岐し、前の面で使用率の高かったカートリッジのルートが選択される仕組みとなっている。
 そして、残機制ではなく時間制となっているのも特徴の1つ。被弾すると時間が20秒減少し、残り時間が0になるとゲームオーバーで、ボスを倒すと300秒追加される。時間短縮の手段としては、ガンマウェポンボタンを長押しすることでブーストがかかりスクロール速度が速くなるのと、敵を破壊したときに近くにある敵弾が時間停止アイテムに変化するのがあり、特にブーストは要所で活用することで大幅な時間短縮を図ることができる。ただし、ガンマウェポンとブーストが同一のボタンを使用することから、ガンマウェポンとブーストは同時には使用できない。
 なお、敵を倒したときには、カートリッジの残量に応じてスコアに倍率が掛かる。ボスを構成しているパーツは特に高得点が設定されているので、スコアを狙うときには重要な要素となる。ただし、ただでさえ攻撃の激しいボスのパーツを破壊していくのはそれだけでも一筋縄ではいかないものがあるが。

 個人的に、自機の装備を多数の武器から選択できる作品というのは、数だけは多いものの大抵は1つか2つの汎用性の高い武器にしか存在意義を見出せないという、あまり良くない印象を抱いている。と、切り出すとこの作品は違うという流れになるわけなのだが正にそのとおりで、これほどまでに武器の選択そのものに刺激を受けた作品は初めてかもしれない。その理由として、αとβ合わせて24種類もの武器があるのだが、万能というのものが存在しないことが挙げられる。どの武器も、攻撃範囲は広いが威力は低い、ボスが数発で沈むほど高威力だが隙が大きく攻撃範囲も狭い、使い勝手は良いがエネルギーが少ないなど、一長一短が極めて明確に設定されている(ある意味”使えない”武器ばかりとも言える)。そして、これらの武器単体ではEnigmaに立ち向かうには力不足なものの、それらを組み合わせることで、長所を活かす場面を棲み分けたり、短所を補ったりといった相乗効果で武器の潜在能力が引き出されていくのである。この組み合わせ考えて実践し、結果を出せたときに受ける刺激が手応えとなり、そこに大きな魅力を感じた次第である。
 さらに、ガンマウェポンの存在とルートの分岐がこの魅力をより一層高めている。ガンマウェポンはあくまで補佐的な位置づけであるが、例えば敵の攻撃を封じるFREEZEをボスの開幕で使用すれば無力化した状態でボス戦を開始できるし、カートリッジのエネルギーを代替するFALLBACKとSHIELDβを併用すれば長時間無敵を維持できる。TRANSMITのように無敵と攻撃を両立した使い勝手の良いものもあり、その存在感は計り知れない。カートリッジとガンマウェポンとの更なる相乗効果の高さから、ガンマウェポンこそがこの武装システムの主役ではないかと思えるほどである。そして、ルート分岐は道中こそその差異はさほど大きくないものの、ボス戦においてはαコースは広範囲の攻撃が、βコースはボスの行動範囲の広さがそれぞれ特徴となっている。当然ながら、動き回るボスに攻撃が集中できない装備で挑んでも効果は薄いわけで、各ボスの特徴に応じた装備が必要となる。しかし、ボスにだけ着目していると今度は道中が手薄になることから、ここでも万能の装備というものが存在せず、どこで折り合いを付けるかが思案の為所となる。そして、それがまた楽しいのである。
 加えて、特徴付けが明確な武器がこれだけ数多く揃っていることから、選択した装備によるプレイ内容の差異もまた大きいものがある。これにより、進むルートに応じて武器を選択する以外に、特定の武器に着目して、それを活かすために他の武器との組み合わせやルート選択を如何にするかという方向からの攻略も大いに興味をそそられる。武器の選択を軸とした楽しみ方の幅は実に広く、そして数合わせの武器では決して得られないものである。
 この作品でも本当に使い物にならないという武器は存在するとは思うが、数合わせで武器を用意したような作品とは明らかに一線を画している。武器が多くなればそれだけ調整にも手間はかかるが、多様性を全面に出すために真摯に取り組んだ姿勢が伺える作りには敬意を表する次第である。

 演出面では、やはりワイヤーフレーム調の画面構成に目が留まる。ひたすら無機的な展開が物語に沿った独自の世界観を上手く表現しているかと。ボスもそれぞれその攻撃に即した派手な動きや変形をしてくるのが見た目にも楽しいものがある。特に4αのボス”ゲートキーパー”は往年のゲーマーなら見た瞬間にニヤリとするものがあるはず。
 楽曲はサウンドモードが無いのが残念なほど道中、ボスともに印象的な曲揃いだが、何といってもEnigmaの最終段階で流れる曲が秀逸。システムの最期を予感させる哀愁を帯びた旋律は、静かに心を奮い立たせるものがあった。

 一般的な装備の多い作品は、使える装備を見つけたら攻略の大半が終了という印象があるが、この作品は全ての武装の性能を把握してからが開始地点であった。性能を把握する前に漫然とプレイしていたときはその難易度の高さにクリアできる自信が無かったのだが、きちんと武装の組み合わせを考えてから攻略してみたところ、予想以上にすんなりとクリア。このことが大きな刺激となって武装を選ぶ魅力に開眼させてくれた。現在は4種類の組み合わせでクリアを達成したが、まだまだ試してみたい組み合わせは数多くある。
 その魅力が理解できるまでの敷居は若干高かったものの、製作者のこだわりと熱意がこの武装を選択する奥深さから如実に感じ取ることができて、諦めずに取り組んだ甲斐があったというもの。同人ゲームをプレイしていて良かったと心から思える作品にまた一作出会うことができた。


氷室 万寿 |MAIL
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