パラダイムチェンジ

2006年08月02日(水) 日本沈没

今回は映画ネタ。見てきたのは「日本沈没」
知り合いの方にタダ券を頂いたので、前から見たかったこともあり、見に行ってきた。

この映画の印象を一言でいうなら「リアルってなんだろう」である。
この映画がリメイクされる元になった「日本沈没」の映画は、小さい
頃に見たことがある。といっても、多分TVの再放送だったと思うんだ
けど、日本が沈没してしまう、というのは半ばトラウマの様に記憶に
刻み込まれたと思う。

その前作の中で覚えている気がするのは、確か松尾嘉代が地下街で、
増水した水に飲み込まれそうになるというシーンなんだけど、それが
実際に映画の中にあるのかは、前作を見返すつもりはないのでわから
ない。そもそも、松尾嘉代という名前を小さい私が覚えているはずも
ないので、もしかするとその後見直したのかもしれない。

で、なんでそのシーンが印象に残っているかというと、自分が同じ
立場になったらいやだなあ、と画面を通してその苦しみが伝わって
来たからである。

ということで今回の日本沈没も、半ば怖いもの見たさ、お化け屋敷に
入るみたいなつもりで見に行ったんだけど、実はそういう身につまさ
れるような痛いシーンはほとんどなく。

全体を通して、なんというか、実写なんだけどアニメっぽいのだ。
映画の中では、熊本城は火山弾で崩壊し、東京も地震で六本木ヒルズ
をはじめとして、どんどん崩壊していく。
その倒れていく映像は、最新のCGでとてもリアルに作られてはいる
けれど、同時にそれを見ている私は、この映像がフィクションである
事がわかってしまうというか。

この作品のメガホンを取った樋口監督は、以前確かアニメの「エヴァ
ンゲリオン」の絵コンテを切っていたからなのかどうなのかはわか
らないけれど、各都市が崩壊していくさまは、とても映像栄えはして
いるんだけど、だからこそ、それがデフォルメというか強調した画で
あることを見ている私は感じ取る。つまり、視覚の楽しみはあっても
身体には響いてこない。
でもそのおかげで安心して見ていることができる。

以前、やはりアニメの監督の押井守が、インタビューで答えていた
内容で、CGの発達により、全世界的に実写がアニメ化している、と
いう発言があったと思うんだけど、今回の映画もそういう感じだと
思うのだ。

だから、逆に言えば、日本が崩壊していく様をリアルに描きこまれた
映像に対して、萌えることさえできてしまうのかもしれない。
少なくとももしも、私が10代くらいで、日常に退屈さを感じ、こんな
日本なんてなくなってしまえばいいのに、と思っている人間だったら
この映画の映像は、もっとリアルに感じられたのかもしれないなあ、
とも思うし。

でもそれって、考えてみれば「ゴジラ」とかも一緒かもしれない。
映画「ゴジラ」を見ている時って、ゴジラに対して被害に巻き込まれて
しまうパニック映画として見ているというよりは、多分自分がゴジラ
の立場になって、街をどう破壊していくのか、という方に(少なくと
も日本のコアなファンは)感情移入している気がするし。

だからこそ、単なるパニック映画になってしまったアメリカ版ゴジラ
は、日本では人気がなかったのかもしれない。

そもそも、日本の怪獣映画っていうのは、中に人間が入っていて、
それがミニチュアの街を破壊することは前提になっているわけで。
つまり、この映画はフィクションであるというのを前提にして楽しむ
映画だと思うんだよね。いわばプロレス的なものというか。

で、今回の映画の場合は「ゴジラ」の代わりに自然の猛威が主役だった
のかもしれない。
だから、豊川悦司演じる科学者は、敷島博士?っぽいといえばそう
思うし。
だからこそ、ああいうラストになったような気もするのである。

その上で、今回の作品で印象的だったのは、草��剛が演じる主人公の
行動である。
彼は今回、日本が崩壊するという時に、自分の愛する人とそして物語
の冒頭で自分が助けた、身寄りのなくなってしまった少女を連れて、
国外に移住しようと愛する人に持ちかける。

でもその一方で彼の親兄弟はまだ被害の起きていない、福島にいる。
もちろん、その家族にもどうするのか、と聞きにはいくけれど、母親
が、このまま日本と運命を共にする、と言われたときに、結構あっさ
りと、その決断を受け止める。

いや、でもこのまま日本にいるということが、生き別れになってしま
うことを考えたら、必死になっても説得しようとする気がするんだけ
ど、そこは結構あっさりとしているのだ。
で、多分こっちの方が、今回の主人公にとってはリアルなんだろうな
と思うのである。
でも、多分アメリカや他の国でこういう描写があったら信じられない
とか言われるだろうなあ、と思うんだけど。

そしてこの物語のクライマックス、彼は彼にしかできない使命を選択
し、不可能に思えるミッションに挑む。
その辺りのドラマツルギーというかカタルシスの作り方が、すっごく
ベタなアニメの文法に思えるんだけど、でももしかするとこういう話
の方が、リアルに感じられるのかなあ、なんて思ってみたり。

2時間半という時間の制約の中で、日本が沈没していく様と、その状
況で生きていく人たちの話の中に、愛を絡めようと思った時、その
最大公約数というか、正解はこういう感じだと思うんだけど、その分
今までどこかで見てきた映像とか物語という感じがしてしまうのだ。

もしも本当に、日本が沈没するという事態になった時には、そこで
起こる事っていうのは、自分の想像を絶する事態になるとは思うん
だけど、その自分の想像力の範囲内で済んでしまった分、安心して
見ることができたのかもしれない。

それに想像も絶する事態というのを、映画の中で実現しようと思っ
たら、予算の問題や、技術の問題でもリスクを冒す必要があるし、
その冒険が必ずしも成功するかどうかわからないことを考えれば、
こういう風に手堅くまとめた方が正解なんだと思うのだ。

だから確かにこの映画は、大画面で見た方が楽しめると思う。
もしも私がこの映画をレンタルで借りてみた場合には、多分見たい
シーン以外は飛ばしてしまいそうだし。
ということで、ちょっと辛口に聞こえるかもしれませんが、一見の
価値はあると思います。


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harry [MAIL] [HOMEPAGE]

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