パラダイムチェンジ

2006年02月11日(土) 藤田元司監督死去/今週のR25

元巨人軍監督の、藤田元司氏がお亡くなりになった。
私は、個々の選手で好きな人はいても、どちらかといえばアンチ巨人
だし、藤田監督時代の巨人に特別の思い入れもないんだけど、
「ほぼ日刊イトイ新聞」で糸井重里の口から語られる、藤田監督の
エピソード
が結構好きで。

3年前の「智慧の実を食べよう」というほぼ日主催のイベントで藤田監督
を拝見したりもしていたので、やっぱりちょっと知っている人が亡く
なった、という感じがして。

昨年の手帳に確か藤田監督がその「智慧の実を食べよう」で喋っていた
ことを書き写していたなあ、と思って見返してみたら、次のような
言葉を引用していた。


やっぱり一つのことを一生懸命集中してできたっていうとき、人って
変われるんじゃないかと思うんですね。だから子供たちにも「何でも
いいから一つ見つけろよ。それを徹底的にやってみろよ。そうすれば
そこに何かあるよ。たとえ何も見つからなくても、やっただけいいじゃ
ないか」というようなことをよく話すんです。自分にとっては野球と
いうものがあったもんですから



なんでこの言葉を手帳に書きとめようと思ったのかは、今はもう定か
ではないんだけど、多分去年この本を読んだ時には、この言葉がグッと
響いて書き留めたんだろうなあ、と思う。

このエピソードは藤田監督が、野球で出会う前までは、手のつけられ
ない不良で、ケンカに明け暮れていたのが、野球をやって人に誉めら
れた事でガラッと変わった、という話である。

ついでながら藤田監督はこう語る。


しかし、やることをやり抜かないと強さというのは出てこないし、
優しさも出てこないんじゃないかと思うんです。

物事を徹底的にやり抜いた人というのは、ものすごく優しいですね。
王貞治君にしても、長嶋茂雄君にしても。裏側はあんまり見えません
けど、遠征先の合宿で一緒に寝起きしたりなんかしてじっと見てます
と、すごい優しいんです。そのかわり、グラウンドへ入ると鬼みたい
な顔になるんですね。



その王貞治監督は、新聞上でこうコメントを寄せている。
「一生を野球にささげた人生でご本人に悔いはなかったでしょう」と。

個人的には、人口透析を受けている人の苦労も知っているので、今は
安らかにお眠り下さい、という気持ちである。
藤田監督のお冥福をお祈りいたします。


話は変わって、今週配布されているR25誌のロングインタビューに
古田プレイングマネージャーが登場している。>>リンクはこちら

この中で興味深かったのは、パッと見は順風満帆に見える彼のプロ
野球人生、そうでもなかったようで。
ヤクルト入団当時、野村監督の著書を片っ端から読んで、監督の需要を
取り入れた、だとか。

でも、確かに古田選手といえば、眼鏡をかけているからという理由だけ
で、最初のドラフトは候補になったのに指名されなかったりとか、もし
くはキャッチャーミットの構え方が従来とは違うから、と難癖をつけら
れたりしながら、適応してきたらしいし。(今では古田スタイルのミッ
トの構え方をする少年野球の選手も多いらしい)

だからなのかもしれないけれど、監督としての選手の指導方針は、
基本的に放任主義であるらしい。
以下、引用させていただくと、

「指示待ちの姿勢になると、表現やパフォーマンスはできないと思う。
自分の意志がないと、正しいと思うことを自信を持ってやれない。
結果は同じかもしれないけれど、自分で選択したという過程には大きな
意味がある。その意志を育てたいんです。
管理の中からは生まれません。

こちらの要求は、ひとつ。"何月何日にゲームがあるので、それまでに
仕上げてきてください"。そのためには調整が必要ですよね。これ、
プロの世界に残っている人はきちんとできてるんです。その辺は早め
にわかってほしいと思ってる。間違った方向に進んでいる人には注意
しますけど、自分で考える時間は与えてあげたいなと」


この前紹介した、中田英寿、平尾誠二の考え方とも共通すると思う
けど、古田監督の一番の強みは何か、といえば今まで生え抜きの選手
で、一緒にチームメイトと戦ってきた、ということなのかもしれない。
だからこそ、チームに対する信頼力みたいなものは強いだろうし。


R25誌からは、もう一つだけ、引用させていただくと、
最終ページ、作家石田衣良のエッセイ「空は、今日も、青いか?」から
気になった箇所を。
石田衣良が出会った、本好きなハイヤーの運転手との会話。


「それでね、わたし、つくづく思ったんですけど、本は安いですね。
今、映画1本って1800円でしょう。文庫本なんて、せいぜい500円です
からね。それで、あれだけたのしませてくれる。それに、わたしらは、
客商売じゃありませんか」

 はいはいといい気分で、上得意にうなずくぼく。

「やはりお話ができるというのが、大切なんです。クレームがくるのが
一番困るんで。それを防ぐためには、あらかじめ会話で気もちを通して
おくのが大切なんです。これは本を読んでる運転手と読まない運転手
では、はっきり差がつきます」

 なるほど、それはよくわかる。作中の人物の気もちになって、はら
はらどきどき、泣いたり笑ったりの物語の世界をともに生きるのだ。
感情移入の力と肝心の言葉の力が磨かれないはずがないのだった。


これまた、手前味噌ながら自分がちょっと前に書いた話とも共通する
かなあ、と。
でも、確かに本を読んでいる人間の方が、感情移入と言葉の力は磨かれ
ると私も思うのだが(客商売だし)、でも、感情移入の力、という意味で
は、マンガの影響力も大きいかなあ、と思うのだ。

マンガの場合、それこそいろんな物語に入り込む力といったものが
磨かれると思うし、読むのも簡単だし。
ということでマンガを読む人の事をちょっとフォローしてみたり。

今の私は、実はあまりマンガは読んでいない。昔は、週刊で発売されて
いる主要マンガ誌全部をフォローしているくらいだったので、私が活字
中毒になるきっかけは、マンガにあると思うし。

ただ最近は、マンガの単行本をまとめてドンと大人買いする資金力が
あれば一体何冊のハードカバーが買えてスペースが助かるだろう、など
というケチな奴に成り下がってしまったので、マンガを読む機会が
減っているのである。

でもたまにマンガ喫茶に行って、ちょっと話題になっているマンガが
あれば手にとって読んでみるし、「ハチミツとクローバー」とか「鋼の
錬金術師」とかは結局買っちゃっているし。

ついでながらオススメのマンガなどがあった場合には、貸していただく
分には何でも読みますので、もしも読ませたいマンガなどがあった場合
には、貸して頂けると幸いでございます。


 < 過去  INDEX  未来 >


harry [MAIL] [HOMEPAGE]

My追加