パラダイムチェンジ

2003年10月31日(金) 男の引き際

10月は、様々な人たちの引き際が話題になった月だった。

巨人軍、原監督の去就に始まり、道路公団の藤井総裁の更迭劇、
そして、中曽根元総理を次期総選挙で公認しない問題と、そして
阪神、星野監督の勇退劇。

これほど、著名人たちの引き際に脚光が集まった月も珍しいんじゃ
ないだろうか。

このうち、前の3人に共通するのは、自分の意思で辞めた訳ではない
という事だろう。
すなわち、誰かに辞めさせられた人たちである訳だ。

そしてもう一つ共通するのは、3人とも誰かの不用意な発言で自分たち
のプライドを、いたく傷つけられたということかもしれない。


その賛否はともかくとして、原監督が辞任を申し出た背景には、
今年の巨人戦の成績もそうだけど、TVの視聴率の問題があるん
だろう。
今年の巨人戦の視聴率は、過去最低だったらしいし。
思えば以前、藤田監督から長島監督に代わった時も、TV視聴率が
取り沙汰されたんじゃなかったっけ。

でも、原監督の現役時代と同様に、あのミスター長島の後を受け
継いだら、どんな人が監督に来たって、人気は下降気味になると
思うし、また、昨年監督就任1年目で優勝をしてしまったら、今季
もう一度優勝しない限り、成績が下り坂になるのは当たり前だろう。

本当の問題になるのは、今年ペナントを逃してしまった原巨人が、
来期どんな風にチームを立て直すのか、そこにこそ監督とフロントの
力量が必要で、もしも立ち直ったら人気も戻ったんじゃないのかな。

そう考えると原監督、本当に間が悪いというかなんと言うか。
ミスターの後釜でなければ、もう少し周囲の見方も違ったのかも。
でも、これが最後というわけでもないだろうし、出来れば次回は
より磐石の基盤を築けるように出来ればいいんじゃないだろうか。


そして、藤井総裁と中曽根元総理。
二人の去就?がこの時期に問題になった背景に、総選挙の影響がない
といったら嘘になるだろう。

二人には悪いけれど、小泉政権の人気取りのために人身御供に出され
たと本人たちが思うのも無理はないかもしれない。
また小泉さんたちの誤算だった事は、彼らのプライドに火をつけて
しまった事だろう。

でもいっちゃあなんだけど、老人に年齢を理由にして、またプライド
だけが誇りの人に無能を理由にして切ろうとしたのが、そもそもの
間違いだったような気もするんだけど。

この二人、原監督の潔さに比べると、権力の座に固執するさまが
ちょっと醜く見えてしまうのは、二人にとっては「後がない状態」
だから、という事もあるかもしれない。

すなわち、議員はどんなに大御所でも、選挙に落ちればただの人。
議員でなくなれば、その発言力、影響力は少なくなってしまう。

また藤井総裁にしたって、自分の地位も金にも固執しない、と言った
人があれだけ抵抗する理由の一つは、このまま素直に首を切られた
場合、運輸省OBとしての立場も危うくなってしまうのかもしれない。

つまり、あそこまで抵抗すればこそ、よくぞ筋を通した、とOB達の
間で浮かぶ瀬もあれ、素直に従っていたら、彼らや道路族議員達にも
無視されて、自分の居場所がなくなってしまうからこその抵抗、と
いう側面もあったんじゃないのかな。


でもね、このお二人に考えて欲しいのは、今の時代、切られる痛みを
感じなくていい人、という存在自体が希少なんじゃないのかな、と
思うのだ。
多かれ少なかれ、ほとんどの人が何かしらの痛みを感じている時代
だからこそ、自分たちだけ特別だとは思って欲しくはないというか。

例えば、藤井総裁の場合、じゃあ道路公団改革派の職員で、藤井総裁
に窓際に飛ばされてしまったと言われている人がどう感じていたのか
を考えた事はあるのかなと思うし。

中曽根元総理にしたって、衆院議員を辞めざるを得なかったからと
言って、その存在感全てが否定された訳ではないだろう。

国会議員を引退した人たちでも、例えば松野頼三や後藤田正晴の様に
今も現役議員の相談役として必要にされている人たちもいる訳だし。

むしろ肩書きに頼るのではなく、中曽根泰弘個人の存在感で勝負して
いけばいいんじゃないのかな、なんて思うんだけど。
まあ、野中さんのように、引退したとたん、ちょっと影が薄くなって
しまったような気のする人もいたりするんだけど。

でも彼らに本当の実力があるんだったら、これからも周囲からは
尊重されていくんじゃないかな、と思うのだ。


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harry [MAIL] [HOMEPAGE]

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