店主雑感
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2002年05月08日(水) 2002年就職戦線

 以下は昔知っていた大工さんから聴いた話
しである。

 「近頃じゃ自分のような者でも名人と言っ
て、おだててくれる人もある。ありがたいこ
とだが、じつは、本当の名人上手にかかっち
ゃ、自分などまるで形無しだから情けない」

 「くやしいが、どう逆立ちしたって足下に
も及ばないのだから、しょうがない」

 「それと反対に、いくら厳しく仕込んでも、
本人がどんなに一生懸命頑張っても、どうに
も、一人前にできないというのもいる」

 「世の中、一割の天才と、一割の鈍才がい
て、これはもう、最初っから問題にならない」

 「問題はあずかって仕込めばものになる八
割の凡才で、努力の次第によっては、いつか、
人から名人上手とおだててもらえるようにも
なる」

 「でも大抵は、辛い下仕事が辛抱できない
か、すぐに名人を気取って身を持ち崩すかで、
いなくなってしまう」

 2002年の初夏、就職活動に駆け廻る碌
に社会経験も持たない20代の娘を相手に、
つまらない駆け引きのようなまねをして、帰
りの電車の中で涙ぐませることが、本当に人
材を得る途であると信じているなら、今日の
企業には、ただあきれるばかりである。

 この不況下、求職者に対して採用数が極端
に少ないのはわかる。
 しかし、一割のダイヤモンドの原石だけが
狙いのような選考の仕方はばかげている。

 新卒者全員が、自分こそ磨けば光るダイヤ
の原石であると、その証拠提出を求められて
いるようなものだ。
 これでは、うそでもはったりでもいいから、
とにかく自分らしさをアピールし、何が何で
もキラリと光って見せなければならない。

 トレンド企業の人事部長に大工の棟梁のぼ
やきを真似る資格はない。


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