折からの暑さはすっかり影を潜め、 うっかりソファーに寝転んだ僕に、 風は秋の匂いを運んできて、僕は眠りに落ちた。
目が覚めると、雨が降っていた。 窓から外を見ると、緑色の傘を差す老婦人が道路を横切っていた。
---
大学に入りたての頃、僕は緑色の傘を使っていた。 お気に入りの傘だった。
当時付き合っていた彼女はデートの途中で、 緑色が私に似合うから取り替えて、 と言ったのを鮮明に覚えている。
奇しくも、彼女との別れの日に雨が降って、 僕はその傘を手にサヨナラをした。
今思えば、その時の彼女の一挙一動は、 「他に好きな人ができた」と伝えていたのだと思う。 経験の浅い僕は、それは僕の所為だとばかり考えていた。
---
それから緑色の傘は暫く使っていたのだけれど、 コンビニで盗まれてしまった。 そのうち買いなおそう、と思って10年が過ぎた。 でも、今でも緑は好きな色の一つ。
今日の風は、忘れていた思い出を連想させた。 夏は好きな季節だけれど、そろそろ飽きたし、 次の季節への準備を始めようか。
|