あお日記

2002年11月24日(日) ラザの変化


 4年余りに及ぶラザの片思いに決着がついたのがこの年の夏ごろだったようだ。もちろんそれだけのことならここに書く必要もないし、安易に彼のプライベートに触れる愚を恥じねばならない。ただこのことは私にとっても後々重要になってくる出来事だったように思う。

 当時ラザは百貨店で販売員をしており、そこで出会った女性と付き合うようになったようだ。そのことについてあらたまって彼から聞かされた時に「いっちゃんを諦めたから付き合い始めたわけじゃないんだ」と静かに重く口を開いた彼のその言葉がラザという男の性質をよく語っているように感じた。
 持っている性質は違うが、ラザも私も『恋愛』よりも相手そのものにのめり込む傾向があるようだ。まあ当然といえばそうなのだが、一途な未熟者ゆえに内包する危険性に気付かないで、いつまでも自分の中にある片方向な信念を後生大事に抱え込んでしまう。こんな私には当時の彼がとてもスマートな男に写った。未来の恋の行方はともかくとして、いっちゃんから離れて一歩踏み出した彼になにか安堵の気持ちを抱いたものだ。後から分かったことだが、ラザもおそらく私と同様に人間同士の悲哀と快楽を交互に経験しながら傷ついていったんだ。周さんもタケダもおんなじだ。再三言うように、私はそれに気付くのが遅いのだ(笑)。


 ラザの気持ちの変化を知ってから私の中もグラついてきた。いっちゃんが一方的に去ってから抱いていた彼女への嫌悪感が徐々に薄れていった。それと同時に、この間私が彼女に対してとってきた冷ややかな対応について後悔の念が大きくなっていくのだった。ということは要するにまたもやいっちゃんについて考えるような時間が多くなってきたように思われる。結局それは過去への憧憬でしかないのだろうが、私の気持ちの中にいっちゃんという呪縛をかけるような時期として記憶している。記憶というのは恐ろしいものだ。一途にそれを信じた私は将来、より盲目になって彼女と再会する羽目になる。

 ただ不思議なことに再開した日記をひも解くと、私が抱いてきた気持ちの裏づけと反した内容になっているのだ。端的に現せば「いっちゃん>嶋さん」だと思っていたのが日記では明確に「いっちゃん<嶋さん」となっているのだ。読み返した時は自分でもかなり混乱した。が、今ではそれがよく分かるのだ。まだ幼かった私自身が素直に感じていた気持ちが。私の欲しいものは何だったのか、私はずっと分かっていたんだ。


 なのになんでこんなに遠回りしたんだか(笑)。



 < 過去  INDEX  未来 >


あお [MAIL]

My追加