僕らの日常
 mirin



  彼のキャンパス1@明

絵描きがいた。

いつもの通りの街角で彼は絵を描いている。


『夜も見るよ』
『朝もいるな』
『昼だっているさ』

口を開く友人達の証言からも絵描きが毎日あの場所で
絵を描いている様子も窺い知れる。


雨が降る日も
雪が降る日も
雷鳴が轟いても
風に吹き消されそうでも

彼は毎日何も言わずキャンパスの前に立っている。


人の波や音にその姿をかき消されてしまいそうだ。

だけど、そんな風に思う者の気も知らず
絵描きの彼は、今日もただただ前だけを見つめている。


彼のキャンパスには何が描かれているんだろう。
あのキャンパスを覗き見ることは容易い

ストリートアーティスト達に混じって絵を描いているのだ。
たまに恋人達が似顔絵を頼んでいるのを見たことがある。

その大半は返事をしない彼に焦れ
怒って行ってしまうのだけど

たまに嬉しそうな、幸せそうな、表情で
頭を下げながら、彼の元を去っていく手を繋いだ恋人達。


あんな表情をさせて
あんな空気を作らせて

微笑みひとつ作らないのに

あの絵描き、一体何をしているんだ?


今日もいつもの街角で絵描きの彼はキャンパスの前で・・。
 

2004年10月26日(火)
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