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2004年04月17日(土) 「新聞配達員」

 〜秘密〜
僕が担当しているのは一丁目の三十五から三十九番地の早稲田通りと大日通りに挟まれた区域で、乗用車がやっと通り抜け出来るくらいの古い町並みと戦後の闇市の陰を残した、だいたい四百軒近くの家やボロアパートが犇めきあったところです。 

 無人の街中に白い吐息をはき出し黙々と新聞を配達するこの時間が僕は一番好きです… この灰色に縁取りされた区域の人々は寝ているのか?死んでいるのか?この世で躍動しているのはこの僕の肉体と頭脳だけだと思うとなんだか知らないけど嬉しくなり「生きている」って感じるんです。

 配達している時は誰とも喋らなくていいし、無駄な笑顔を振りまくことも、気を遣う事も、嘘をつく事もしなくていい… 人間と係わる煩わしさから逃れる事が出来るんです、むしろ人間と係わっている時の僕は死んでいる‥ そう、呼吸はしていて死んでいるんです 

 僕はただひたすら新聞の行き先へ投げ込んでいく、玄関のポストや牛乳箱の上、シャッターの隙間、鍵のない飲み屋のカウンターに、豪邸にある庭のハンモックの上に、雪の日も雨の日も五センチ開かれた曇りガラスの窓の隙間に・・ 

 昔、テレビでB-21が東京を空襲した光景を頭に浮かべて一人僕はニヤつく、僕はパイロットで新聞が爆弾だ。爆弾はオレンジ色の光を帯びて目標地点に投下されていく、僕の投下した爆弾は確実に目標地点を捕らえていくのだ。パイロットである僕はその爆弾で人々が笑ったり泣いたりする事など考えたりはしない、それが任務だからだ・・ だから僕はパイロットになった自分にだけ満足して笑うんだ、思いっ切り・・ 決して声に漏らさぬよう。


セシオ |MAILHomePage

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