2010年08月06日(金)  暫定2.0。
 
職場で健康診断で新人の保健師が視力検査を担当しており、部署は若干違えど私は上司に近い人間なので「それでは始めます。よろしくお願いします」と、多少緊張した面持ちで検査が始まり、視力0.5のゾーン、1.0のゾーンなどを難なくクリアし、1.5の辺りで苦戦を強いられたがクリア。2.0の時点で完全にぼやけてしまい何となくしか見えなくなってしまった。
 
「ではこれは?」保健師が図形を指す。
「うーん。右」
「おお」
 
私はこの「おお」という小声で発せられた感慨の声を聞き逃さなかった。実力であれ勘であれ、「おお」と発したことは図形の位置が正解だったということである。そうなると「ぼんやりとしか見えない」という不利な現状に最初の図形をクリアしたという要素が追加され鬼に金棒。新人の保健師の操作を始める。
 
「それではこれは?」
「さっきの隣の図形で同じ右ってことはないから、まあ下あたりでしょう」
「わ。それではこれは?」
「一個間隔開けたね。右、下ときて一個開けたということは、開けた部分が左だったと仮定した場合、上の可能性が高いということと、下を当ててしまったがためにそれに反論したいキミは、真逆の位置を指定する可能性が高い。よって上」
「ううう。じゃあこれは?」
「めっちゃ右」
「もー! ちゃんと真面目に当てて下さい! なんでわかるんですか!」
「動揺して最初に指定した図形をまた指したから」
 
と、新人に対して全力で心理戦を仕掛ける最低な上司だが、この保健師、優しそうな顔をして気が強い。
 
「認めません」
「は?」
「ヨシミさん、2.0じゃなくて1.5です」
「え、なんで?」
「だって全部勘で答えてましたから」
「勘じゃなくてあなたの表情とか思考パターンとか考えてたんだよ」
「そんなの本来の目的じゃありません。1.5です」
「えー。あと0.5まけてよ。っつうか当たってるんだし」
「1.5です」
「じゃあ暫定2.0だ」
 
と、最後に呟いた「暫定2.0」が数年前盛んに言われていた「web2.0」っぽい意味のわからない格好良さが気に行ってナースステーションに戻り、「私は暫定2.0です。今日から暫定2.0と呼んで下さい。総婦長になれない婦長。婦長になれない主任。そういう私みたいな立場の人間を総じて暫定2.0と呼ぶようにしましょう」と、上司の言葉を誰一人聞いちゃくれないとこ辺りが暫定2.0。
 

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