2002年11月26日(火)  『シャンプーのきざみ』についての絶え間ない考察。
『横のきざみがシャンプーのしるしです』
 
26年と4ヶ月、僕はお風呂の中でこの言葉の真意について考え続けた。
どのシャンプーにも例外なく書いてあるこの言葉。
 
横のきざみの意味はわかる。だってシャンプーの横にきざみがあるもの。
このきざみはきっと目盛りみたいなものだと思う。
だけどこれを目盛りだと仮定した場合、その利用法を実証する手立てがない。
 
おそらく1目盛りが平均的なシャンプー1回分の量だと思うけど
透明ではない容器にもこの目盛りは刻んであるし、透明じゃなかったら1回分なんて測れない。
さてどうしたものか。
 
このようなあまり日常生活に影響しない悩み事はすぐ忘れてしまうもので
いつも誰かに聞こう聞こうと思っているんだけど、お風呂から上がるとすっかり忘れてしまって
髪を乾かしている時にはもう明日の仕事のことを考えている始末である。
 
しかし今日、遂に、天啓の如く、仕事中に突然『シャンプーのきざみ』が僕の頭の中を支配した。
 
「……あ、シャンプーのきざみ」
 
患者さんに注射をしている最中だった。
患者さんの右上腕正中皮静脈に23ゲージの注射針が刺さっている最中だった。
おそらく注射器の目盛りにシャンプーのきざみがオーバーラップしたのかもしれない。
 
「は……なんですか?」
 
若い女性の患者さんが僕を見上げる。
注射の最中に『シャンプーのきざみ』なんて意味のわからないことを言う看護士に対し
多少の不安を抱く表情をしている。
 
「あ、ほら、シャンプーの容器の横の部分に目盛りみたいな『きざみ』があるでしょ。あれ何のためにあるのかなと思って」
 
若い女性の患者さんは注射の最中に『シャンプーのきざみ』のことを考えていた看護士に対し
変わらぬ不安の表情をやや強くしながらも優しく笑いながら答えてくれた。
 
「フフフ。えとね、あの『きざみ』はリンスにはついてないでしょ。そういうことよ」
 
そ、そういうことか!

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