文字姫
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神鳴り。→→→2003年11月28日(金)
少し前に同性愛についてまじで考えたんで残しておきます。
偏見があるわけでも特別好んでいるわけでもありません。
あくまでも真面目に考えたので、その辺ご理解下さい。
「神鳴り」。















男がいて女がいて。
愛し合うために性があって。

それなのに何をどう繕っても俺たちは男同士だから、俺らが気にしていなくても、これは、男女を分けた神様に、逆らっていることになるんだろうか−。







--神鳴り







『会いたい』。

深夜、鳴ったケータイを開くと、見慣れた名前で届いたメールは、この四文字だけだった。

時計を見ると二時。

あぁ、今仕事終わったのか。
会うかどうかを迷っても、「お疲れ様」くらいなら、言いたかった。

眠いのか、疲れているのかもわからずあまり働かない頭で、また反芻した。

『会いたい』。

『会いたい』。


外は夕方からの雨がひどいことになっていた。

雨音なのかもわからないほどの激しく屋根を打つ音とカミナリ。
時折窓の外がフラッシュみたいに光り、遠くの方でおぞましい音がする。

こんな天候の中どうやって会いに来れるんだろう。

思った瞬間、またケータイが鳴った。
今度は電話だった。

出ようかどうか少し考え、それでも結局我慢しきれず、出てしまう。

「つかさ?俺だけど」

久しぶりに聞く声。

ああ、光だ。

胸の辺りがあったかくなって、掴まれたかのように苦しくなる。

俺が黙り込んでいると、光は疲れたような低い声で俺を確認する。

俺のケータイだから俺じゃないわけないのに、何度も「つかさ?」と呼びかけては、俺の声を求めた。

「…今どこ?」

「ん?駐車場。車ん中。…寝てたか?」

「うん、まぁ」

「あぁ、……悪い」

「いや、構わねーよ」

核心をつかない会話が少し続き、尽きて沈黙になってしまうとようやく、光は息を吐き、言う。

「メール、見たか?」

自分の部屋の中に響く音とはどこか違うような水音が、受話器越しに聞こえる。

自分と光との間の距離を感じて、それだけで、会いたいと思ってしまった。

光に会いたい。

会って、光の腕の中で、光の匂いの中で、温もりの中で、光と、光とと、求めてしまう。

光に会いたかった。

「……見た」

小さく呟いた。

見たけど、俺も会いたいけど、すごく会いたいけど、明日の仕事だとか、お互い寝不足なんだからとか抜きにしても、会うのはいけないような気がしていた。

雨の音に混じって、光の声が耳元で聞こえる。

「……会いたい。駄目か?」

会いたい。
会いたい。
つかさ。と、何度も。
押し殺すように。

「…明日、仕事は?」

「八時入り」

「何時まで?」

「さぁな。今日と同じくらいだと思う」

「昨日どのくらい寝た?」

「ん、二時間くらい」

「疲れ、溜まってんだろ?」

「……溜まってるよ」

「……」

「……」

沈黙の間も、鳴り止まない自然の音。

何かに怒り狂うように響くカミナリの音の後、光が追いつめられたかのように、だけど静かな口調で、言った。

「明日も仕事だ。疲れも溜まってる。寝てない。食ってない。働いてる。……でも会いてんだよ。どうしても会いたい。会って、抱きしめて、キスしてセックスして、つかさのこと愛したい。愛してるから。……会いたい。つかさ……」

普段決して弱いところを見せない光の弱さを見ているんだと思った。

何かあったのかもしれない。
限界がきているのかもしれない。

守りたい。
支えてあげたい。
会いたい。
俺だって会って抱きしめたい。

キスしてセックスして、光を感じたい。
愛し合いたい。

仕事が忙しくても。
どんなに疲れてても。
寝てなくても。
疲れて死んでしまうかもしれなくても会いたかった。

会いたい。
光に会いたい。

激しい雨音に煽られるように淋しさが溢れ出てくる。

仕事があるのに。
疲れてるのに。
寝てないのに。
こんな天候なのに。

男なのに。
男なのに。



「愛してるつかさ。会いたい。つかさ。会いたい。会いたい。……愛しとる…」

弱った光の声を、激しい雨が消す。

俺が会いたいと言えば。
俺が目を瞑ってしまえば。
光は会いに来る。
俺たちは愛し合える。

「会いたい」と声に出そうとした。
刹那、窓の外に、昼間のような明るさが走った。

自分の耳で聞いているのか、光の受話器から聞こえてきたのか、互いの耳に直に聞こえるほどだったのか、そのくらいの大きなカミナリが、長く、響いた。


あぁ。

聞こえる。


僕らの行為を、お許しになれないと、神鳴りが響いてる。

眩しく光って、僕らの行為を咎めてる。


醜い。
汚らわしい。

雨音と混ざり、僕らを攻撃する。


僕は。
僕たちは。


神様がお作りになった性別に。
神様がお生みになった生命に。


なんて背徳なんだろう。




「…つかさ?どうした?」

耳を伝う光の声に、俺は金縛りにあったように、口を動かせなくなってしまう。


そもそも俺らは、今までどうやって愛し合ってきたんだろう。

愛し合うために作られたわけでもない器官を使って。
それによって何かが生まれるわけでもないのに。

「愛し合う」?

男なのに?
二人とも男なのに?

「愛し合う」?

……どうやって?


何かがおかしい。
いや、おかしいなんていうものではない。

間違ってる。
すべきじゃない。
気持ち悪い。
抱いてはいけない感情のはずだった。

抗って。
逆らって。

気付いてしまった。


……僕らは、神様も敵に回してしまったんだろうか。




「つかさ?」

何度目かの光の呼びかけが聞こえる。

雨音に抗って。
神鳴りの傍で。

「……駄目だ。できねぇよ光。やっぱ会えない。会えへんねん。ごめん。ごめん。………ごめんなさい……」


神様が作った人間。
神様が決めた性別。

逆らってしまった。

愛してしまった。


僕はなんで男に生まれたんだろう。
なんてことをしてしまったんだろう。


男なのに。

男なのに。






「……つかさ?」


雨音は消えない。

僕らを激しく打ちつけるだろう。

激しく。
激しく−。









「……神様が見てる」
























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