文字姫
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足の切断。→→→2003年07月14日(月)
昔から私は、足の怪我に敏感だった。

前にも書いたかもしれないけど、小学1年生の時、人の家の玄関フードを突き破り足に大怪我をしたことがあった。

父がたまたま町内会の班長で、集金について行った時のことだ。
母の日だった。

玄関フードは、暗くて見えなかった。

突き破って、気づけば左の太ももに、赤だったかピンクだったか、とにかく花のようなものがあった。
肉が花のように開いていた。

「花」だった。
今でもはっきりと覚えている。
一生忘れない。

救急車で運ばれて、何十針か縫った。
手術は1回じゃ成功せず、歩けなくなり、もう1度して今じゃもう生活に支障はない。

傷は右の足首と左の太ももにはっきりと残った。
太ももは5ミリずれてたら死んでいたらしいし、生活に支障がないとはいえ、右足首は今でも上がりが悪い。
ピアノのペダルはずっと普通の人のようには踏めなかった。

その、トラウマからか、私は昔から足の怪我に敏感だった。

そして何より、足を切断しているということに、敏感だった。

テレビの怖い話で、足を切断される話を見てからだったかもしれないし、上の怪我が原因かもしれない。

とにかく、「足の切断」に、敏感だった。

足を切断している人、足を切断するということ、「赤いくつ」という童話、「切断」という言葉、「義足」という言葉、全てが怖かった。

とても恐れていた。

テレビで足を切断した人のドキュメントを見ても、ドラマの中の人間が足を切断しても、とても怖かった。恐怖だった。

漠然と、無条件に、自分もいつか、足を切断するんじゃないかという恐怖が、認められないまま、ずっと、心にあった。

怖かった。

「足を切断する」という行為が。
「足がない」ということが。

怪我のトラウマだと思いながら、足を切断する夢も、幼い頃から何度か見た。

「切断」に敏感だった。
だけどそれは、「腕」じゃなく、「指」じゃなく、いつも「足」に恐怖があった。

いつか切断するんじゃないかという恐怖。

わからないことへの取りとめもない感情が怖かった。
確かに恐怖として存在していたから。


……今日、病院に行ってきた。

MRIの検査で、細かいことがわかる日だった。

週末安静にしていたから、もう歩けるし、痛みもほとんどなくなっていて、ギブスになる心配すらしていなかった。

少しシップを貼って包帯巻いて、体育はしばらく休んで安静にしていればいいものだと思っていた。
学祭も出れると思っていた。


十字靭帯が切れてるらしい。


まだカメラ入れて調べないと確実ではないけれど、私は90%確かだと思う。

前の病院がヤブだった。
異常ないと言われていた靭帯に異常があった。
切れてたわけだ。

検査もしないでギブスされて固められて、完治もしていないのに完治したからもう通院はいらないと言われた。今更怒る気にもならない。

十字靭帯は自然治癒しなく、放っておいても一生直らないと言われた。

1ヵ月の入院と、手術が必要らしい。

それか、激しい運動はしないで過ごすか、どちらかだと言われた。

病院ではまだ理解しきれず、様子を見ることにしたけど、考えて、手術せざるを得ないと思う。

ハードルとハンドボールが原因だったけど、もちろんそれも駄目で、バスケも駄目、跳び箱も駄目、跳ねるような運動は駄目、バレーやスキーくらいならできるかもしれない、と言われた。

私まだ16だし、例え学校やめることになったとしても、一生バスケや跳び箱、そういった激しい運動をしないでいられる自信は、全くない。

夏休みか、その少し前、入院することになると思う。

考えたけど、考えるまでもなく、手術を選ぶしかないみたいだ。

1ヵ月が惜しいとか、勉強が遅れるかもしれないとか、学校関係の心配より、私が手術を躊躇った理由は、傷跡が残るだろうということと、夏休みがなくなることにあった。

いや、傷跡よりも、私が考えていた夏休みが、全て駄目になるということが、とてつもなく躊躇わせた。

家を出れなくなる。

夏休みは家を出るつもりだった。
ひとりで少し遠くへ行くつもりだった。
将来があるとすれば、関わることになるはずだった。

それが叶わなくなった。

怖い。

傷跡が残ったらどうしよう。
退院後、今の気持ちが萎えていたらどうしよう。
退院後、家を出ることは可能だろうか。
もし手術が失敗して、歩けなくなったらどうしよう。
今度こそ家を出られなくなる。それどころじゃない。

もし手術が失敗して、足がなくなったらどうしよう。

怖い。
怖い。
怖い。
怖い。
怖い。
怖い。
怖い。
怖い。


神様はどうしてこんなことをするんだろう。

私に家を出るなと言うのか。
死ねと言うのか。
足を切断させるつもりなのか。

どうしてこんなことになったの。

夏が来て、家を出て、全て、変わってくれるはずだった。

環境も、友達との距離も、学生という立場も、家族との関係も、捨てる決意は、できているはずだった。

夏休みの試行錯誤で、夏休みが終わってからの私の居場所が、決まるはずだった。

なのに。



学祭はなるべく無理しないで出ることにした。
ステージだけこなせれば後は別段問題ない。

今日学校は遅刻して行って来た。
ステージの練習もあったし、下校時、バス停まで歩くのが辛すぎた。
これから数学の宿題だ。

さっき、「十字靭帯」で検索したら、4千件近くヒットした。

なんとなく1つ開くと、写真つきだった。

文章と、手術の光景の写真。
そして靭帯の写真。
生々しい写真。

一瞬見ただけだけど、気持ちが悪くなった。

とても見れそうにない。
とても見れない。
見れるわけがない。

怖い。
怖い。

酷いよ。
酷すぎるよ。
なんで?
なんでこうなるの?

私の夏奪わないで。
私の決意奪わないで。
私の未来奪わないで。

私の足奪わないで。

これは、足がなくなる前兆じゃないかと、帰りのバスで、なんとなく、恐ろしいことを考えていた。

















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