疲れ目にも疲れた頭にも「スマイル」 - 2004年10月14日(木) そんなわけで、ブライアン・ウィルソンの新譜「スマイル」の話なんですが。 またその話かよ、って、そんな意見聞く耳もたねーぞコノヤロ。 えー、この「スマイル」ってのは、 本来はビーチボーイズ名義で1967年に出るはずだったアルバムなんですが、 リーダーのブライアンがLSDとかでぶっ飛びまくって、 曲の断片だけは作ったけど1枚のアルバムにまとめることができなかった、 といういわく付きの迷盤。 未完成ですから、逆に様々な伝説を生むのも当然で、 たまたま発売が同じ年(の予定)だったから、 ビートルズの名盤「サージェントペパーズ」を超えたんじゃないか?とか、 出てたら世界は変わってたんじゃないか、みたいな尾ひれがつきつつ、 マニアがスタジオから盗み出してきた音源の断片が、 海賊盤として出回ったことがそれを加熱させ、 研究書が出たり、海賊盤を元に完成形を予測する現象まで発生。 まったく、未完のくせに人騒がせな話ですよ。 で、誰が催促したんだか知りませんが、37年の時を経て、 今回やっと完成した(させられた?)わけです。ハイ。 (詳しい経緯は今発売中の『レコードコレクターズ』読んで下さい) でね、これは前に海賊盤ライブを買ったときにも書いたけど、 「スマイル」って本当ディズニーランドみたいなアルバムなんです。 シリアスなロックなんかじゃないの。 オーケストラ沢山使ってるし、バカだし、 子供が聞いたほうが楽しめるんじゃないか?くらいの。 聴後感覚が、本気でディズニー映画のサントラだもんよ。 でね、ちょうどオレは「スマイル」が出るはずだった、 60年代後半のロックが好きでよく聞くんですが、 この時代にどんなものが流行ってたかを見てたら、 ブライアンの狂気がより鮮明になってきまして。 まず大きな動きとして、ビートルズがアルバム「リボルバー」を出して、 その後の傑作シングル「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」 で本格的なサイケに突入しようとしてた。 その延長に、名作(と言われてる)「サージェントペパーズ」があるわけですな。 で、サイケ・ビートルズの影響がアメリカ西海岸にわたり、 LSDの爆発的な流行によってドアーズやジェファーソン・エアプレイン、 ラブなどのサイケデリック・ロックが登場。 それらサイケを統合させたポップスとしてモンキーズが現れた。 ボブ・ディランはザ・バンドの面々と「ベーストメント・テープ」の制作に突入。 バーズもカントリーロックに走り、70年代に花開くことになる、 レイドバックの基礎が出来る、と。 一方、エリック・クラプトンがいたバンド、 クリームの影響でブルースロックが流行。 ついでにジミ・ヘンドリックスがデビューして、 ガレージ・ロックが雨の後の竹の子のごとくニョッキニョキ。 このブルースロックとガレージの発展系が、いわばハードロックですな。 一方、黒人方面ではオーテス・レディングが絶好調で、モータウンもまだ健在。 ジェームス・ブラウンがファンクを完成させ、 スライ&ファミリーストーン登場…相成るわけでして。 いわばこの時代は、ロックを中心とするポピュラーミュージックが、 一番先進的な時代だったわけです。 なのに「スマイル」のブライアンさんは間逆の方向に行ってる。 おそらく幼い頃に家のリビングで聴いたであろう、映画音楽やドゥワップ、 往年のジャズなどのオールド・ウェイブな音楽を、 ごった煮にして吐き出してるんです。 ブライアンはよく言われるようにアダルトチルドレンの走りみたいな人で、 (ちなみに未発表ソロ作のタイトルは「アダルトチャイルド」だった) LSDやってる間にガキの頃に戻っちゃってたんじゃないか? と、想像できるわけです。 その触媒となったのは、たぶん、「スマイル」で作詞を担当した ヴァン・ダイク・パークスなんだよね。 事実、ヴァン・ダイクさんはディズニーのスコアの仕事もしてたらしいし、 彼のソロ「ソングサイクル」と、 彼がプロデュースしたハーパースビザールの「シークレットライフ」って、 「スマイル」にそっくりだもん。 “アメリカ再発見”っていうテーマもまったく一緒だし。 ブライアンさんは、いまだにこの時期のバッドトリップが尾を引いてて、 誰か庇護者がいないとダメっていうか、 ようはボケ老人みたいなもんなんですけど、 まあ、完全なダメ人間になっちゃったわけですよ。 でもそれって、いわば子供みたいなもんじゃない? ああ、そういう風になったから、 こういう子供っぽいアルバムを完成させられたのかね。 今のバンドのメンバーもインタビューでこう言ってましたよ。 「彼をヤル気にさせるの大変だったよ」 本当、ダメだなぁ、ブライアンって。 だから「スマイル」最高なんですが。 ...
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