妄想手記「シャア・アズナブルの伝言」 - 2004年09月25日(土) 仕事の締め切りがひとつ伸びたことが判明。 ばんざーい!ばんざーい! てなわけで、DVD「スターウォーズ・トリロジー」を買ってきました。 この週末は家から出ねえでずうっと見続けるぞ!!! と、その前に。 ガンダムのシャアが『逆襲のシャア』以降も実は生きていて、 もし生きていたらどんなことを言うんだろう? と妄想した結果、こんな原稿が出来ました。 宇宙世紀130年代に出版された、 『定本・宇宙世紀の戦争』という軍人の戦争体験談本の、 あとがきをシャアが書いた、という設定になってます。 ここでのシャアが非常に情けないのは、 「逆襲のシャア」の延長線上にあるからで。 シャアはガンダム世界における、 最強のダメ人間だと思ってますから。オレ的には。 -------------------------------------------------------- 筆者あとがき 本書の後書きをシャア・アズナブルこと、 キャスバル・レム・ダイクンに依頼する、という暴挙に出たのは、 本書執筆中の昨年の六月のことであった。 彼の消息はすでに一部のメディアで報じられていたが、 それはあくまでパパラッチ・レベルのものであり、 直接、彼の言葉に耳を傾けるということは行われていなかった。 というよりも、そんな愚行は誰も行わなかったというのが正解だろう。 なぜならその内容如何によっては、連邦議会を巻き込んだ 一大スキャンダルに発展しかねないからだ。 彼は宇宙世紀におけるブラックボックス的な存在なのである。 だが、本書が今世紀中に行われた六つの紛争に参加した 軍人たちの証言集である以上、彼の存在を外す訳にはいかない。 そこで筆者は、現役時代の彼がインタビュー嫌いだったことを踏まえ、 本書の感想を書いてもらおう、と立案。 依頼書と少々の質問項目、執筆途中の原稿を添え、 関係筋に届けてもらうことにした。 それから数ヵ月、編集部に返事が届いた。 それはこの仕事を受けるか否かの返事ではなく、 後書きの原稿そのものだった。 いや、正確に言うならば、 これは、軍人たちの証言が引き出したであろう、 シャアのごく個人的な戦争の追懐だったのだ。 筆者の感想はここでは述べない。 彼のありのままの言葉を受け取って欲しい。 ************************** 私は何のために戦ってきたのだろう。 我が父、ジオン・ズム・ダイクンの理想を実現するためか。 地球圏の覇者たる称号を手中に収めるためか。 それとも、ただのパラノイアか。 そのどれもが正解であろうし、そのどれもが誤った認識だと思える。 私は人類の業を背負っていたに過ぎない。 それは「人は戦い続けなければならない」という業であり、性だ。 人間の歴史は戦争によって彩られてきた。 戦いには、ある種の扇動者がいた。 アドルフ・ヒットラー、ナポレオン・ボナパルト、チンギス・ハン……。 彼らが戦争の張本人だというのは、あくまで後の歴史解釈だ。 多くの民衆が心の底で欲していた戦争状況を、 彼らは具現化したに過ぎない。 人々の背中を、そっと押しただけなのだ。 今の私には、それが解る。 宇宙世紀0087年、反地球連邦組織エウーゴのリーダー、 ブレックス・フォーラ准将が暗殺された。 彼は死の間際、私がエウーゴの指揮を取り、 宇宙移民の意志を地球の人々に届けることを欲した。 死に逝く個人の言葉である。 その願いは心からの希求だったに違いない。 だが彼の誠実さ、切実さとは裏腹に、 組織の思惑は破廉恥極まりないものであった。 彼らは、私がいることによって、宇宙に拠点を持つ企業や、 コロニー有力者の協力を取り付けられると踏んだのだ。 なぜか? それは私が宇宙移民の思想的ヒーロー、 ジオン・ズム・ダイクンの息子であり、 かつてシャア・アズナブルという名前で呼ばれた男だったからだ。 この頃の私は、それら組織の思惑はあるにせよ、 自分の力で世界を変えられるのではないか、と夢想していた。 若さ故の過ちである。認めたくないものだ。 第二次ネオジオン紛争でも私は扇動者を演じた。 地球とスペースコロニーの経済的不均衡を解消するため、 旧ジオン所縁の有力者たちが、私に接触を試みてきた。 彼らの筋書きは、こういうものであった。 「難民のためにキャスバルが立ち上がる。 連邦が難民救済のために用意した 不安定なスペースコロニーを占拠し、独立を宣言……」 このとき己の運命を悟った。 私はジオン・ズム・ダイクンの息子である限り、 人身御供でしかないのだ、と。 ならば、道化役を甘んじて受け入れよう。 そして、その立場を利用し、私の個人的な思いを 遂げられないだろうか、と思案したのだ。 まず思いついたのが、最愛のララア・スンを殺した連邦兵士、 アムロ・レイに対する復讐だ。 ララアと出会ったのはインドの娼館だった。 彼女の聡明な瞳に、妹アルテイシアの面影を見た私は、 娼館からララアを引き上げ、英才教育をほどこし、 社交界に出席できるほどに仕立て上げた。 私にとって彼女は妹であり、恋人であり、母だった。 私は彼女の中に、あの健やかな時代と、 家族の幻を見ていたのかもしれない。 故に、それを奪ったアムロが許せなかった。 そしてもう一つが、地球連邦への制裁である。 連邦が宇宙移民の自治を認めてくれてさえすれば、 父が革命の士になる必要もなかった。 ザビ家とその支持者に暗殺されることもなかっただろう。 私は真っ先に地球への隕石降下を立案した。 と同時に、これは、私にこのような運命を強いた 父に対する復讐でもあった。 生前、父とその一派は、地球の環境保全を訴えていた。 地球の自然を守るために全ての人類は宇宙に移り住むべきだ、と。 だが、それは宇宙移民の自治権確立の方便でしかない。 拝金主義や経済論から来る発想でしかない。 このような嘘に彩られた父の思想的根幹=地球を破壊したかった。 私にとって、あの計画は、己の血と家族と、 その幻影に対する挑戦だった。 戦争の結果、地球圏はどうなったか。 宇宙世紀120年以降、地球連邦は疲弊し、 コロニーの力が前にも増して強大になった。 そこに新たな扇動者が現れ、 紛争をもたらすとまでは考えてはいなかったが……。 いや、これは単なるいい訳にすぎない。 忘れていただきたい。 道化の愚行の結果だと笑っていただきたい。 第二次ネオジオン紛争の後、何をしていたのかと聞かれる。 だが話すほど良い想い出も悪い想い出もない、というのが本音だ。 ただ、0100年のジオン共和国の地球連邦への編入は感慨深いものがあった。 父への憎しみがあれほどであったにも関わらず、 宇宙からジオンの名が消えることに一抹の寂しさを覚えたのだ。 今やジオンは教科書に載っている歴史上の人物であり、 戦争の首謀国の名でしかない。 もはや過去の遺物だ。 そして私は、ただの老人だ。 老獪の戯言に付き合っていただき、申し訳なく思う。 たまにはこうやって己の人生を振り返るのも悪くはない。 胸が躍る。 キャスバル・レム・ダイクン ...
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