Donny Hathaway 「These Songs For You Live」 - 2004年07月20日(火) ダニー・ハサウェイはつくづく損な人だと思う。 同じ70年代のニューソウル勢と比べても、 ポップさはスティーヴィー・ワンダーに負けるし、 エロさに関してはマーヴィン・ゲイに劣り、 社会性はカーティス・メイフィールドに差をつけられてしまった。 しかもダニーは音大に通うほどのインテリ黒人だったせいか、 スタジオ盤を聞くと、どうしてもその理論的部分が鼻についてしまう。 どちらかというと作曲よりもアレンジが得意だというのも、 オリジナル至上主義のニューソウル勢の中にあっては歩が悪い。 彼の知性は、そのまま彼の限界を表しているようにも思える。 そんなダニーが本来の黒人性と肉体性を発揮できたのはライブだった。 71年の「LIVE」は不屈の名盤だ。 マーヴィン・ゲイをカバーしようがジョン・レノンをカバーしようが、 己のものとしてしまうパワー。 もう一枚のライブ盤「パフォーマンス」では、 やはりアル・クーパーやリオン・ラッセルの曲をやっていて、 これがまた素晴らしい。 最近、ダニーのニューライブ盤「These Songs For You Live」が出た。 内容は彼の2枚のライブ盤からの抜粋と未収録曲を加えた、 ライブ・ベストといった趣。 実に感動的なアルバムだ。 今回もビートルズ「イエスタデイ」、スティーヴィー「スーパーウーマン」 というある種、禁じ手的な楽曲を自らの解釈で演奏している。 「パフォーマンス」にも入っていた、 リオン・ラッセル「ソングフォーユー」のカバーに至っては、 涙がこぼれそうになるくらいの出来栄えだ。 そしてスタジオ盤での楽曲も、ライブ特有のいい意味でのラフさが、 曲のうまみを増幅させている。 こういった風通しのよさがあったら、 彼のスタジオアルバムはもっといいものになったんだろうな、と思う。 ダニーの大いなるクリエイティヴィティが、 ガチガチで隙のないスタジオ盤を作らせたのは間違いない。 彼をそうしたてあげたのは、 彼が所属していた白人のレコード会社だった。 白人たちは彼を知性のある黒人、 市民運動に熱心な新時代の黒人として売り出した。 故にダニーは知的な黒人アーティストを演じなければならなかった。 そういう部分がダニーのシリアスさを強調させたのだろう。 もちろん、黒人社会に向けて良くあれと歌った言葉にウソはないと思う。 だが裕福な家庭で育ったダニーがゲットーについて歌うことに、 大きなギャップを感じていたのもまた事実なのだ。 そのころスティーヴィーやマーヴィンは、 レコード会社に縛られない活動をはじめていた。 カーティスは自らレコード会社を立ち上げ、自由を勝ち取った。 ダニーだけが籠の中の鳥だった。 そして1979年の1月、ダニーは自ら命を絶ってしまう。 彼を殺したのは誰だ? 白人か? アメリカの社会か? それとも彼自身だったのか? それは誰にもわからない。 我々に残されたのは3枚のスタジオアルバムと、 3枚のライブアルバムのみである。 ...
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