浪奴社員の呟く
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2004年06月09日(水) 暫し沈黙を

守ってはいたのですが、それはどうにも掴みきれないからであって、また同時に何かしらの不一致を覚えていたからなのです。

私はその場に居合わせた者ではありませんが、もしその周辺に生きる者であったのなら、間違いなく彼ら彼女らの全てに問いかけるのでしょう。「そのとき、お前たちは何をしていたんや?」


この話において、私が最も衝撃を受けたことは、小学生であった事実でも、ネットの普及でもなく、『カッターを持って来てはいけない日』の存在でした。それが、極めて短絡的且怠惰な処方にしか思えないのです。欠けているのは、子供の命に対する認識ではなく、大人の『私以外の全てが私である』ということの意識に他ならないと思うのです。

「2時間目が終わったあと、カッターを持っているのを見た」
それだけ?持ってきてはいけないのに、持って"いた"ことがいけないの?

低俗で卑劣な犯罪を、重複することの麻痺を除いて、特に殺人ともすれば、その成就すべき為のハードルのほうが遥かに高くあるべき、と思うのですが、それさえも容易に飛び越えられてしまうからこそ、悲劇は鳴り止まないカーテンコールに幾度となく応えているのです。ハードルは確かに存在したのです。

語らなければならないのは、心的障害でも心のケアでもなく、そこで見て見ぬふりをしたこと、気付かなかったこと、その何食わぬ顔で過ごしたことの深い過ちであるべきなのです。それを「知らなくてもいいのよ」覆い隠すのは、『優しさ』でもなければ『甘やかし』でもないのです。


大人は子供に対して、無意味に手を掛けすぎます。それは子供はコドモであって、これへの対応は常に過大であるからこそ、有事の際に「善処致しましたが、この様な結末を迎え、甚だ遺憾に思います。」

本当に守りたいのなら、30年後をこの子たちに託すのなら、本当に大切なことは何なのか、を示さなければなりません。この子たちに適わない大きな枠付だけを揃え、「さぁ、これでボクに出来ることはやったよ。それでも、ボクはもうコドモじゃないから、何が起こっても仕方ないよ。そりゃそうさ、常に対応は後手後手を踏むんだよ。」

おかしいのは、コドモではなくて、彼ら彼女らの写し出した、当にオトナそのものです。子供は『一部』でしかなく、『私以外』そのものであることを認めず、ただ闇雲に"可愛がって"いくことが愛情である、と既定することで、自分に及第点を与えているだけなのです。詰り、この安易な結実が生み出される原点は、「俺が見ちゃったからって、何かが出来るわけもないじゃない。そういうことを、子供に要求するなんて、もっと出来るわけないじゃない。生きていくためには、危機を回避しないとダメじゃない。それを教えないと、生き残れないじゃない。」

正しいことを語るには、勇気が必要です。それ以上に、自分に出来ないことを語っては、只の偽善者にも及びません。だから、正しいことが何なのか、に眼を瞑り、曖昧に70点を得られる『仕方ない』選択を強いるのです。

私が衝撃を受けたのは、この曖昧な選択が今や常識として罷り通ってしまうことの終落です。突き詰めれば、「アイツは自分勝手だったから、そうなっちゃったんだよ。」「ならその中に、オマエは存在せんかったんやな?ちゃうやないか、確かにオマエはそこにおった、それを恰も『関係ない』こととしてやり過ごすことこそ、オマエが自分勝手なんや。」



〜〜「私以外のすべては私でない」ということを、神戸事件の少年は自覚してたやろうし、愛知の少年もかろうじてそうかもしれない。でも今回はきっと「私」と「私以外」の境界もあいまいな子が、凶悪犯罪を犯している。むしろ、今の大人たちが「それぐらいで人を殺すか?」と言わないことの方が病んでいる。「子供のやることやから」と片付けて、大人もそんな馬鹿げた理由で人を殺す可能性について考えないことのほうが、俺ははるかに怖い。大人の「私」は、すっかり溶けきってしまっているのかな・・・。〜〜



彼が言い放った『大人の「私」は、すっかり溶けきってしまっているのかな・・・。』その意味が、漸く私にも理解出来たように思うのです。そう、おかしいのは『大人』、正しいことに背を向けている『大人』、それをどうにか覆い隠すことに奔走する『大人』、結局は自分に返ってくることを恐れる『大人』、知らず知らずに見落としていくことに為れた『大人』、だからこんなにも煩雑で不可解なのです。

私は、私の子供達を守りたい。その想いは恐らく、全ての大人の共通する処でしょう。ですから私は今一度、自らを顧み、背を向けていないか、覆い隠していないか、恐れていないか、知らぬ間に見過ごしていないか、私自身にそう問いかけなければなりません。それが、私のこの子たちを守り、この子たちが30年の先に、次の子たちを守ることに繋がると信じています。


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