窓のそと(Diary by 久野那美)
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「ゲゲゲの女房」の終盤近く。妖怪ブームが去り、注文が減って仕事がなくなってしまった漫画家があずきあらいに会う。
「おれたちのことを描いてくれんかね?」と言われ、心が揺さぶられる。
漫画家は大急ぎで家に帰り、漫画を描き始める。 注文が入ったの?誰から?と聞く家族に、主人公が答える。
「本人からだ。」
この話がとても好き。 放送を見ながら泣いてしまった。
きのう、cttの一人芝居の稽古に遊びにきてくれて11年ぶりに会ったたOさんと出演者の片桐慎和子嬢と三人で飲みに行った。今回の公演のきっかけについてきかれて、私は上の話をした。 話をわかりやすくするためだ。
今回、ものすごくひさしぶり(11年ぶり)に台本を書いてお芝居をした。 理由はとてもシンプルだ。 出演者の片桐慎和子嬢が、私がほんをかいたら出演したいと言ってくれたから。そういうと、なぜか驚かれた。
「・・・・・出たいから書いてくれといったら・・・書くの?」 とOさんが聞く。 「そりゃ、よほどのことがないかぎり、書くでしょ。」 「え・・・・」 なぜか絶句された。 「それだけで?」 「だってそんなこと言ってくれる人いないんだから。いたらそりゃ、書くでしょ。」 「そういう問題なん?」 「みんなそうじゃない?忙しいひとは無理かもしれないけど、でも、 無視はできないでしょ。心が動くでしょう。」
まだ納得がいかないようなので、私はあずきあらいの話をした。 話をわかりやすくするためだ。
「私は・・・あずきあらいなのですか?」と片桐慎和子嬢が隣で困惑していた。 「あずきあらいと私は少し事情が違うように思いますけど・・・」
そうかもしれないけど、細かいことはいいのだ。 要は、当事者から頼まれて心が動かないはずがない、という話だ。
「書いてくれと言えばいいのか・・・・・」 Oさんがぶつぶつ言っている。Oさんは私と同い年の役者だ。怠惰な私と違って、ずっと活躍されている、素敵な役者さんだ。
なにを言ってるのかよくわからないので、直球で聞いてみた。 「書いたら出てくれるの?」
するとなんと。
「そりゃそうだろう。出るさ。出るんだよ。」
はあ???????なんだ、その断定文は?
「・・・・・・・出るの?」
「出る。」
「なんで?」
「ずっとそのつもりだけど。」
「そんなこと聞いてませんが。」
「だって、いつかはやるわけじゃない。」
ええええ????いつかはやるのですか?
「それがいつかってことだけで。」
えええええ?????そうなのですか?
知らなかった。ものすごく驚いた。 だって11年やりとりもなく、過去に2回公演しただけだよ。
しかし、敵は今相当飲んでいる・・・・。いや、出てくれるなら味方なのか??
「言いましたね。今。」 「言った。」
「自分で何言ったかわかってますね?」 「わかってる。」
「そんなこと聞いたら、私、忘れませんよ。」 「うん。」
「逃げ隠れできないように書きとめたりしますよ。」 「いいよ。」
「日記に書きますよ。」 「どうぞ。」
う〜ん。 こんなこと、考えたことがなくて。 どう考えたらいいのかわからない。 東京在住の俳優と劇団も台本もない10年もブランクのある劇作家が一緒に公演をしたりできるのか?
でも、この話が本当なら、 私はいつの日か、Oさんとお芝居をすることになる。
Oさんは、とても素敵な役者さんだ。 声がほんとにきれい。手が大きい。 周りのひとや状況に俊敏に反応する。 一緒に舞台に立つ人を自分と同時に素敵に見せる華麗な技を持っている。 けっこういろんな面があってそれぞれに面白い。
書きだしたら終わらないので、とりあえずこれくらいにするけど。
Oさんとお芝居をするとしたら、何をしよう。 やりたいことがいろいろ、頭に浮かんでは消える。 いや、そもそもOさんは何をしたいんだろう? タイムリミットで詳しく聞けなかったんだけど・・・。
とにかく言質を取って証拠を残すことにした。 ・・・・・ってなんか違うよな。 それをもとに強請るのか? ・・・・・なんか違うよな。
ほんとかな? ほんとだといいな。 もしほんとじゃなかったら、ほんとにするにはどうすればいいかな。
あずきあらいに会った水木茂さんの気持ち。 私にはものすごくわかる。 ほんとうに、ほんとうに、ほんとうに幸せだったはず。
たしかにちょっと違うけど。細かいことはいいのだ。
あ。そうだ。要するに、ほんを書かなくちゃ、ってことか。
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