聞こえよがしに悲嘆をさけぶ

7枚綴り


2004年10月16日(土)

自転車を止めて夜の川を見下ろしていた
街頭も無い真っ暗な橋の上から見下ろす川は流れる音だけが頼りで
目にうつるのはときたま反射する星明かりだけだ

じいっと黙って考え事をしている、つもりだった
端から見れば、女子高生が制服で、夜中に川をじっと見下ろしているのだ
ただ事ではないだろうし、なにか誰にも言えないような悩みがあるのだろうなどと
勝手に想像させるような道具立てだ

もちろん自分だって、そのためにここにきたつもりなのだが
芽衣子はどうしても拡散してしまう自分の思考を持て余していた
どうも、自分はひとつのことだけをただまっすぐ考えることができない
思考は拡散していってしまい、真剣に悩むことさえ出来ない

ここで川をこうして見ているのだって、悩んでいるというよりは
一種のポーズを悩みに対して示しているだけだ

川を見ながら考えるのは今日の授業のこととか先生のこととか
あああたしは雰囲気に酔うことも出来ない
芽衣子はそう思って、そういえば修学旅行で東京に行ったとき
街の風景に見蕩れる皆をおいてさっさと歩き出したのは自分だけだったとも思い出す

慣れてるんだね、と言われたけれど
正直な話、風景を見てもああ東京だな程度しか思う所は無かったし
それよりも服が欲しかっただけなんだけれど

いやーあたしはこれはだめだ、いかん、いけません
ふひー、と噛み締めたままの歯の間からため息を吐いた

「なにしてんの」

いきなり声をかけられてがばっと振り向くと
幼なじみの雄大が怪訝な表情で立っていた

「ふおーなんだ雄大かちょっとマジ超ビビるからいきなり」
「いやいやいやいや、女子高生が夜中にここにいることがビビるから」
「あ、マジで?」

よく見ると、雄大の指先は真っ白だった
もしかすると、大分前からあたしの様子うかがってたのかしらん
そう思うと芽衣子は段々おかしくなってきた

「なにお前、なに笑ってんの」
「えーなに、思い詰めてた感じだった?」
「いじめを苦に自殺とかそういうフレーズが浮かんだ」
「マージで?」

そう言うと、芽衣子はくるっと、軽やかに振り返り
欄干を背に夜空に向かいしばらくのあいだにやにやして
いまいちつかめていない様子の雄大を見ると盛大に吹き出した


えのもと |MAIL