華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜
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2004年10月01日(金)

遠くで私を叱って。 〜夜這い屋〜
日本を代表する大都市・名古屋。
関東でも関西でもない独特の文化を持ち、職場と住宅街のアクセスも悪くない。
思いのほか住みやすい街でもある。

またあらゆるニーズの客を受け入れている、日本一の風俗街でもある。


最近では通り一遍の風俗に飽きつつある上客からのありとあらゆるニーズに答える為、
名古屋はシチュエーションなどを工夫したアイディア競争になりつつある。

既存のソープやヘルス、キャンパブ(ピンサロ)といった店から、
風営法や各条例との狭間で搾り出された『○○ごっこ』のような店まで。
特に名駅西口のキャンパブ街の知恵合戦は凄まじいものがある。

競争原理で選択肢が広がる事は、利用する側にとってありがたいはずだ。


ある暑い日。
そういう気分だった俺は夕刊スポーツ新聞のミニ広告から、
とある店を見つけ出した。


 『 夜這い専門!刺激と興奮、間違いない!
   素人女の自宅へ忍び込み、あとは二人で… 
   伏見 スマイル(註:仮名)�筺�○○−○○○○ 』


仕事上がりの頃、俺は興味半分で携帯からこの番号に電話してみた。
4〜5回の呼び出し音の後、受話器が上がる。


 「はい、ありがとうございます。スマイルでございますっ」
「もしもし、新聞の広告を読んだものですが…」

 「ありがとうございます。当店ご利用は初めてですね?」
「ええ」

 「よく見つけて下さいました。分かりにくいんですよね、その広告」
「・・・そうですね」

 「でもそこに金出して広告出してるうちも間抜けですけどねぇ(笑)」


余分な話も含めて、営業口調も滑らかなその受付の男は、
その後も雑談を交えながら、朗々と店のシステムを立て板に水の如く話す。

とにかく大きな声でよく喋る男だった。
俺は少々圧倒されたが、店の雰囲気は悪くなさそうだ。

そこで好奇心から、一度店を訪ねることにした。


 「ありがとうございます。お待ちしております!
  なお当店は看板等は一切出しておりませんので。
  店舗をご案内しますので、指定場所に到着したらお電話下さい」


不許可営業なのか…怪しい話になりつつあったが、
話で聞く限り、『怖いもの見たさ』的な興味はある。


 「それでは地下鉄伏見駅2番出口のあたりからお電話下さい」


俺は案内通り、移動して到着した地下鉄2番出口から電話した。


 「はい、ありがとうございます。スマイルでございます」
「先ほど案内を受けた者ですが…」

 「あ、ありがとうございます。到着されましたか?」
「はい、2番出口ですよね」

 「はい、そこから大きな看板が見えると思いますが、
  そのビルの二つ奥のマンションの10階、1001号室に
  事務所がございます。そちらまでおいで下さい」



オフィス街の中心部とはいえ、人が住むマンションがあるものだ。
そのマンションの10階にその店の事務所があるという。

雑然と住人の自転車が置かれたエントランス。
フロントオートロックやカメラなど無縁の古さだ。
俺は奥のエレベーターに乗り込み、��を押した。

やや安定感に欠けるぎこちない動きのゴンドラ。
軋むワイヤーがゆっくりと俺の身体を引きあげていく。

再びドアが開くと、薄暗く狭いエントランス。
その正面に事務所となる1001室があった。


インターホンのチャイムを押すと、ドアが開いた。
電話で話した大声の男がいた。


「こんばんは…」
 「ようこそ!新規のお客様ですね。どうぞお入りください」


事務所に通された俺は、ソファに座るように促される。
そこにすでに広げてあったのは、簡単な様式の入会届だった。


 「うちは完全会員制になっておりまして、まず最初に入会金を
  戴いております。まずこちらの書類に必要事項をご記入下さい」


差し出された書類に、必要事項を適当に書き込み、入会金の3,000円を支払う。

その後、より詳しいシステムを説明された。


この店は「夜這い」という非日常を楽しむ店であるという。
そして暗闇の部屋に鍵を開けて忍び込み、ベッドでアイマスクをして
眠るふりをしている女の子に好きに悪戯しても構わない、というのだ。
そこから先は『お客様のリードで決まる』という。


 「素人なので女の子によっては出来ないプレイもありますが、
  雰囲気とノリによっては、ハプニングもあるかも知れません」

「ハプニング、ですか」
 「ええ、店は強姦や本番行為禁止以外は基本的に関知いたしません。
  まぁ、女の子を気持ち良くしてから、上手に『交渉』してください」


微妙な言い回しで俺に妖しく説明する店長。
『上手に・・・』を強調するあたり、裏の意図を感じずにいられない。


 「とにかくうちの女の子は業界素人ばかりですので、まず清潔に
  お願いします。今からこちらでシャワーをお浴び下さい」


そう促され、俺は事務所奥の風呂場でシャワーを浴びる事になった。
中古マンションの風呂場なので狭く、どうにも湿気が抜けきれない。
あまり快適な時間といえない。

そしてシャワーから出た後、いよいよ女の子を決める事になる。


 「お客様!実は本日お勧めの女の子がおりまして…」
「はぁ」


そう言われて写真を見せられる。
無意味なチェケラサインを見せつける、いわゆるギャル系の茶髪娘。
スタイルは良さそうだが、雰囲気が気に入らない。


 「18歳。サービス抜群で、感度抜群。すごくノリの良い子ですねぇ。
  さらなるハプニングも期待できますよ!」
「さらなるハプニング?」

 「ええ、女の子も生身の人間ですからねぇ、そりゃ感じちゃうと…ねぇ」


それは店の関知以上の内容を意味するのだ、と語彙から推測できた。
しかし起こることが前提の『ハプニング』など面白いはずも無い。

気に入らない雰囲気の女に高い金を払いたくはない。


「やっぱり別の娘をお願いします」
 「え?あ、はぁ…」


意外な返答に戸惑う。


 「なら…どのような娘がよかったでしょうか?」
「他にどんな娘がいますか?」

 「ここにある写真からなら…」
「見せてください」


5〜6枚のポラロイド写真を見せてもらう。
ギャル系、人妻風、水商売系、熟女…と様々な女が揃っている。
しかし俺の好奇心を掻き立てる女がいない。

俺は諦めて店を出ようかと思った。


 「あと…まだ写真は無いのですが…」


言い難そうに店長が俺に話す。
俺は店長へと向き直り、話を聞く。


 「20歳の新人がいます。ただ…」
「ただ?」

 「この娘はお口でのサービスが出来ません。あとアイマスクは外せない、
  そして『ハプニング』は一切期待できませんね」
「どうしてですかね?」

 「そのぉ、私も事情が分からないのですが、とにかく堅いんです」
「堅いんですか?」

 「真面目なんですね。なぜこんな店にいるのかって位の」


堅い娘がこんな場末の風俗に存在する矛盾。
どんな娘だろう…俺の好奇心に火が付く。


「その娘はどんな感じですか?」
 「まぁ、中肉中背で髪は黒色ですね」

「その娘でお願いします」
 「構いませんが、サービスは制約が多いですよ?」

「ええ、構いません」
 「…しばらくお待ち下さい」


店長がデスクの電話に向かい、何やら指示を出している。


 「ちょっと準備に時間が掛かると思うので、しばらくお待ちください」


そこから15分ほど待つ間、店長が俺に話し掛けてくる。


 「お客さん、相当風俗遊びに慣れてらっしゃいますね?」
「そうですか?」

 「私もこの業界長いんで、見れば分かります」
「どういう所が、ですかね?」

 「まず、大穴狙いでお勧め以外の女の子を指名するところですかね。
  あと事務所でもオドオドしてない(笑)」


しばらくして事務所の電話が鳴り、俺の前にペンライトと鍵が置かれた。


 「お部屋は隣りのマンション…一階に美容院が入っているビルの2階、
  212号室になります。お部屋の電気は消してありますので、
  このペンライトでお入りください」



<以下次号>








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