| 華のエレヂィ。〜elegy of various women 〜 | ||
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| 2002年07月24日(水) 怒りと決別の遊戯。 『高飛車』 |
<前号より続く> 「シャワーはもう準備できているからさ」 「そう、じゃあ浴びようか」 俺は美砂の手を牽いて、風呂へと向かう。 自分の部屋でも、全て手探りというのも貴重な経験だ。 目も慣れてきたあたりから、美砂の肉体も目に入るようになった。 恥ずかしがるほどの肉体ではない。 ちゃんと乳房もある。 傷もある風ではない。 ボディシャンプーを泡立て、美砂の身体を洗う。 俺の掌、指先の動きのひとつひとつを肌で感じている。 感じやすい身体だ。 気分も盛り上がってきたのか、顔を上げて俺にkissをせがむ。 俺もそれに答え、美砂の薄い唇を吸う。 美砂は勃つ俺自身に手を添える。 今にして思えば、自信に満ちた笑みを浮かべていた。 狙った獲物を自らの力で捕獲したかのような。 シャワーから上がり、やはり手探りで布団を引いた。 白いシーツが、ほんのりと暗黒に浮かび上がる。 美砂のタオルを剥ぎ取り、首筋に吸い付く。 濡れた音と美砂の声が真っ暗闇な部屋に響く。 ・・・・ 「平良ぁ、煙草、擦っていいよね?灰皿は?」 「俺が吸わないから無いよ」 「何でもいいよ」 一通りの情事の後。 俺は空き缶を灰皿代わりに差し出す。 その時、美砂はすでに煙草をくわえ、火を点けていた。 俺は一瞬、気分を害した。 「私ね、本当は帰ろうかと迷ってたの」 「車の中でか?」 「うん。だってね・・・」 紫煙を吐き上げつつ、さらっと俺の自尊心を傷付ける言葉を口にした。 「だって平良って、声と同様にもっと格好良いんだと思ってた・・・」 「・・・・・・」 「ショックだったもの、私さぁ、少年隊のヒガシだと思ってたから」 「・・・・・・」 「あまりに予想と違ってて・・・」 俺はあんなに理想的で完成された男ではない。 顔も、運動神経も、体型もちがう。 何なんだ、この女・・・。 自分勝手に妄想上の俺を作り上げておいて、 俺の姿を見た途端にショックを受けたらしい。 だから、「嘘・・・」とうなだれつつハンドルに伏したのか。 「だから、部屋の明かりを全部消してって言ったのか・・・」 「だったら、平良の姿を見ないでH出来ると思ったから」 はっきり言って、美砂も男に注文できるほどの美人ではない。 頬骨あたりに10円玉大のシミがある。 これを見られたくなかったから、部屋の明かりを消せと言ったのだと思っていた。 やはり顔の欠陥は観られたくないのだろう。 女性ならではの心理か、とばかり思っていた。 俺は呆れて言葉も出ない。 「・・・・・・」 「だって優しい声と言葉が、あの平良だぁって思ったから・・・」 「・・・から?」 「抱かれてみようと思った。でも本当によかった・・・」 俺は次の言葉を見つけられない程、呆れた。 自分勝手で自己完結型の、随分な高飛車女だ。 時間が3時を過ぎている。 着替えを済ませた美砂は、俺に言い切る。 「ね、週3回は会おうね」 「しゅ・・・週3回?」 「そう。心配しないで、私がこっちに来るから」 「そういう意味じゃなくて・・・」 「週末は家族の時間なの。だから平日一日おきね。例の彼なら切っちゃうから」 「そうじゃなくてさ・・・」 「平良、最高に良かったもの。今度は生理明けだから。じゃあね!」 美砂は俺の考えなど何も気付かずにご機嫌で部屋を後にした。 俺は美砂との時間を後悔した。 女を抱いて、これほどの気分の悪さを感じるなど、思っていなかった。 どうせこうなるなら、俺にも考えがある。 男の気持ちを踏み付けることを平気で言い、 やけにプライドの高い美砂の鼻をへし折るようなSexをしてやる。 俺は作戦を練った。 身体を傷付けたり、怪我させることは俺も望まない。 しかし明らかに男を見下すような態度を取る女は嫌いだ。 それにあんな女、嫌われようと構わない。 何も知らない美砂は、一週間後に電話してきた。 「生理終ったから。明日の夜に行くね」 「ああ、溜まっちゃってしょうがないから、早く来てね」 「ふふっ、浮気していないのね・・・可愛い」 ちょっと白々しい演技だったか。 美砂も相変わらずな女だ。 愚かな女と、そんな女に芝居を打つ俺に、自分で嘲笑すら漏れる。 <以下次号> |
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