2002年08月06日(火)  『絶後の記録〜広島原子爆弾の手記』

原爆記念日への意識が年々薄れている。今日がその日であることに気づいたのは、夜9時を過ぎてNHKをつけたら、『原爆の絵〜市民が残すヒロシマの記録』をやっていたからだった。28年前と今年の2度にわたって募集され、一般から寄せられた「原爆の絵」は3000枚を超える。その一枚一枚をデータベース化することにより、同じ場面を描いた絵を特定することが容易になったという。「子を守る母」を描いた90代の男性を、その母の遺児である74才の男性が訪ね、「母を描いてくれてありがとうございます」「この絵に最も縁のある人にお会いできて良かった」と涙しあう場面が印象に残った。

義父に借りていた『絶後の記録〜広島原子爆弾の手記』(小倉豊文著・中公文庫)が読みかけだったのを思い出し、続きを読む。原爆症で亡くなった妻への手紙という形を取って綴られる体験記。57年前に書かれたと思えないほど、文章がみずみずしい。原爆を記録した本や文書にはいくつか出会ったが、これほど事実が痛々しく迫ってくる本を知らないし、これほど美しく切ない恋文も知らない。著者が妻を思う気持ちが胸を衝くたび、二人を引き裂いた戦争と原爆を憎まずにはいられなくなる。序文(日付は1949年2月)で高村光太郎氏は「この記録を読んだら、どんな政治家でも、軍人でも、もう実際の戦争をする気はなくなるであろう」と記している。今でも出版されているだろうか。わたしが借りている文庫は、1996年5月30日5版とある。平和に慣れると、ありがたみを忘れがちだが、平和なときこそ、それを壊すものを恐れなくてはと思う。ほんの半世紀と少し前には、この国も地獄を味わったことを、思い返す機会を持ちたい。

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