2002年05月17日(金)  人生最高の日〜『パコダテ人』最終日

人生でいちばん感動した出来事は何だろう。真っ先に思い浮かぶのは、高校3年の文化祭にクラスで上演した『オズの魔法使い』。わたしは台本・演出・サルの役(ドロシーたちをさらうサル軍団のひとり)だった。前日のリハーサルが大失敗し、「6組は大したことない」の前評判が渦巻く中で迎えた本番。リハのときは動いてくれなかった気球も、まどろっこしかった場面転換も、すべてが奇跡的にうまくいった。

カーテンコールになって、鳴り止まない拍手が体育館を包んだ瞬間、わたしは舞台に崩れ落ちた。全身茶色づくめのサルの衣装だったので、しゃがんだ姿は、巨大な唐揚げのように不様だった。客席で見ていた友人は「気分が悪くなった」と思ったらしいが、膝が震えて、立っていられなくなったのだ。

その4年後、奇しくも同じ『オズの魔法使い』で、わたしはもう一度崩れ落ちることになる。今度は、舞台の上ではなく客席の通路で。教育実習で受け持ったクラスの上演をビデオに撮っていたのだが、カーテンコールで満足そうな生徒たちの顔が並んだ途端、今までの練習を思い出して涙が噴き出した。生徒よりも教育実習生が頑張ってしまっていたのである。

頑張ったことが報われたとき、わたしの感動メーターは振り切られるらしい。今日、『パコダテ人』東京公開の最終回、エンドロールが流れる直前に劇場に滑り込んだ。「一度はお金を払って見よう」と決めていたのに、残業で間に合わなかったのだ。

いちばん後ろのドアを開け、客席に頭がぎっしり並んでいるのを見ただけで、もうダメだった。すぐ横に立ち見の人もいた。席を立つ人はほとんどおらず、皆が画面に見入っているのを見ていた。いいタイミングで自分の名前が画面にせり上がった。スタッフ一人ひとりの顔を思い浮かべながら、名前を追っていたら、熱いものがこみあげてきた。函館市民のみなさんの名前がずらーっと出てきて、涙が止まらなくなった。感動すると、体が震えるんだなとあらためて思った。よりかかる壁がなければ、崩れていただろう。

出てきた知人たちが次々と声をかけてくれた。はじめて会う人も声をかけてくれた。親しい人たちが「祝杯だ!」とごちそうしてくれた。パコダテ人を書いて良かったと心から思えた夜。人生でいちばん感動した出来事は決められないけれど、今夜は間違いなく、そのひとつ。

1979年05月17日(木)  4年2組日記 今日から日記

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